●化学療法

 初回の化学療法(primary chemotherapy)としては、IIb期からIV期に対する現在の標準的な治療法は、パクリタキセル(175mg/m2)とカルボプラチンの併用となっている。これは、国際コンセンサス会議で合意されたもの。ただし、米国の一部の施設がカルボプラチンの用量として血中濃度曲線下面積(AUC)=7.5を主張したため、カルボプラチンのAUCには5〜7.5と幅のある推奨となっている。

 手術で腫瘍を取りきることができた(optimal stage)のIII期に対しては、シスプラチンの腹腔内投与とパクリタキセルの併用も標準治療として認められている。

 ただし、これらの標準的な治療法が副作用の問題などから難しい場合には、パクリタキセル135mg/m2の24時間投与とシスプラチン(75mg/m2)の併用や、ドセタキセル(75mg/m2)とカルボプラチン(AUC=5)の併用、カルボプラチン(AUC=5〜6)単独、シクロホスファミド+ドキソルビシン+シスプラチンの併用療法(CAP)が選択肢となる。

 卵巣癌の化学療法の歴史では、80年代までCAP療法が多く行われていた。その後、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カルボプラチンが登場し、現在の標準治療はパクリタキセルとカルボプラチンの併用となっている。

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 最近の臨床試験としては、米国で行われたGOG0182-ICON5試験がある。この試験では、標準治療であるパクリタキセル+カルボプラチン群と、パクリタキセル+カルボプラチンにゲムシタビンを追加した群、パクリタキセル+カルボプラチンにドキソルビシンを追加した群など5群を比較している(上図参照)。ただし、この5群で有意差は確認されなかった(下図参照)。

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 結論に至っていない課題として、パクリタキセル+カルボプラチンの6コースを標準治療として行い、CR/PRが得られた後に追加の化学療法を行うか否かという問題がある。追加の化学療法のやり方としては、初回と同じ薬剤を用いるmaintenanceもしくは、初回と異なる薬剤を用いるconsolidationが検討されている。ただし、これまでに行われた主な臨床試験6つのうち、有意差が示されたのは1つのみだ。そのため、maintenance、consolidationとも、現在までのところ標準治療としては推奨されていない。

 その一方で、腹腔内投与(IP)は、近年、静注に比べた有意差が3つの臨床試験で示された。メタ解析の結果でもIPの有用性が示されている(上図参照)。そのため、米国癌研究所(NCI)が、卵巣癌の初回治療において、IP療法は標準的な治療法の1つとするAlertを出したほどだ。

 ただし、IP療法には今後の課題も残っている。レジメンが定まっていない、加えて、毒性が強いために完遂率が40%と低い、ポート管理の標準化が行われていないなどだ。そのため、国際的にもIPの臨床試験がまだ必要であると考えられている。日本においては、IPのポート管理がしっかり行える医療機関に限って、IP療法は実施可能であり、標準治療と呼べるというレベルだろう。

●再発

 再発治療の基本は、同じ再発でもsensitive diseaseとresistance diseaseの2種類がある点だ。卵巣癌の場合は、6カ月以内の再発はresistance、6カ月以上経過後の再発はsensitiveとするコンセンサスがある(下図参照)。

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 6カ月以上経過後に再発した場合(sensitive relapse)では、再度、プラチナ製剤もしくはプラチナ製剤+タキサンを利用することが標準的だ。一方、6カ月以内に再発した場合(resistance relapse)に関しては、ドキソルビシン、トポテカン、イリノテカン、ドセタキセル、ウィークリー・パクリタキセルなど様々な治療薬が試みられている。ただし、この場合の奏効率は2〜3割程度に留まっている。また、標準的な治療薬は定まっていないのが現状だ。

 再発卵巣癌に対する臨床試験(RCT)は、6カ月以内の再発(sensitive)を対象にしたものでは、パクリタキセル単独とCAP療法ではCAP療法がよく、パクリタキセル+カルボプラチン併用とカルボプラチン単独の比較では、併用がよいという結果が出ている。そのため、sensitiveの再発にはプラチナ系の抗癌剤を用いることがコンセンサスとなっている。

 一方、resistance再発に対しては、これまでに臨床試験(RCT)は3つ程度となっている。その結果としては、トポテカンとパクリタキセルを比べるとトポテカンがよく、トポテカンとドキソルビシンではドキソルビシンが生存率では差がないものの、PFSで有効という結果であった。そのため、海外ではresistance再発のセカンドラインとしてはドキソルビシンが多く利用されている。