●新たな可能性を示し始めた分子標的薬

 日本肝癌研究会に登録されている約2万5000例を2年ごとに追跡調査した結果では、肝癌患者の約3分の1が肝切除、約3分の1が局所療法、3分の1が塞栓療法を受けていることが示されている。一方、化学療法の全身投与が選択される割合はわずか5%以下だ。これは、肝癌患者では、肝硬変を合併し、白血球や血小板の低下や肝機能の低下のため、殺細胞性の抗癌剤を全身投与できない場合が多い、投与してもメリットがなかなか得られない、さらに優れた局所療法が存在することなどによる(下図)。

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 このような現状のなか、経口マルチキナーゼ阻害剤のソラフェニブによる全身薬物療法が、世界ではじめて進行肝細胞癌患者の生存期間を改善することが示された。

これは、2007年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された、進行性肝細胞癌に対するプラセボ比較の二重盲検試験(SHARP試験)の結果。同試験では、ソラフェニブ群で無増悪生存期間、全生存期間ともに有意に延長された(下図)。

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 その後、ソラフェニブは他の薬剤との併用療法の模索や、肝切除やRFAなどの治療後の再発抑制を目的に補助療法として利用が検討されている。また、TACE後に投与し病状の進行抑制を図る試験も進行中だ。これらの試験結果を受け、近い将来、各ステージの肝癌に対して、分子標的薬が活用され、治療成績の向上に寄与するものと期待されている。