●早期肝癌に対する根治的治療

 早期肝癌に対する根治的治療としては、肝切除、ラジオ波焼却療法RFA)や経皮的エタノール注入療法PEIT)という局所療法、もしくは肝移植がある。2cm以下の肝癌に対しては、RFAと肝切除はほぼ同等の治療成績であるため、患者に十分に説明の上、治療法を選択するべきことが日本肝臓学会から推奨されている。

 肝細胞癌に対するRFAは、侵襲が低くて、3cm、3個以下は理論的にはほぼ全例でCR達成が可能だ。加えて、再治療が何回でもできるというメリットがある。また、入院期間は3〜4日程度で済む。RFAの合併症としては、治療関連死が2600例中1例程度で、安全な治療法といえる。一方、肝切除は全身麻酔下に行われ、少なくとも2週間の入院が必要となる。そのため、早期肝癌に対してはRFAが普及しているのが現状だ。しかし、確実な焼灼が行われないと局所再発だけでなく、肝内転移のリスクも高くなる。安易な適応は避け、やりにくい場所は切除に廻すなど適応の順守と適切な効果判定による焼灼が必要である。

 肝移植も一つの選択肢となっている。1996年にミラノ基準が提唱されるまでは、治療成績は低かったが、ミラノ基準に沿って対象を厳選することで、5年生存率が70〜75%になることが多くのデータで示されている。日本では、海外と同様の基準で肝移植を行えば80%程度の5年生存率が達成されるだろうとも考えられている。

●再発抑制を目指した術後インターフェロン投与

 根治的治療後の問題点としては、再発が多いことがある。肝癌は年率15〜20%、5年で8割が再発する。この再発率は肝切除でもRFAでも変わらない。そのため、根治治療後の再発抑制のための薬剤投与が検討されている。

 例えば、3cm、3個以下で根治的に治療した群にインターフェロンα2bもしくはペグ-インターフェロンα2aを維持療法として継続投与する群と、投与を行わない群に分けて再発率を調べた臨床研究の結果、生存率の有意な改善が示されている(下図)。インターフェロンの腫瘍抑制効果により、再発が遅延もしくは抑制され、結果的に生存率向上につながることが期待される。しかしこれまで多数例によるランダム化比較試験は行われておらず、インターフェロンの再発抑制効果は検証されていない。

 根治的治療後の再発予防は肝癌の大きな課題であり、レチノイドや新たな分子標的薬などを用いた大規模なランダム化比較試験が行われている。

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●進行肝癌に対する姑息的治療

 進行肝癌に対しては肝動脈化学塞栓療法TACE)が、標準治療として広く行われている。TACEは、日本で開発された方法で、癌細胞に栄養を供給している肝動脈に薬剤や塞栓物質を流して癌を「兵糧攻め」にして壊死させる治療法だ。

これまで6編の比較試験がTACEとconservative managementで行われ、最初の4編ではTACEの生存率改善効果は示されなかったが、残りの2編で肯定された。そして、メタ解析の結果、TACEは生存率改善効果があるということが証明されている。

 一方、全身への抗癌剤などの薬物療法は、肝癌では位置づけが難しいのが現状だ。現在、国内で認められている肝癌に対する抗癌剤は、代謝拮抗薬、アルキル化剤、抗生物質、白金製剤などで、利用が多いのはシスプラチンや5-FUなどとなっている(下表参照)。ただし、これらの薬物を用いた化学療法は、ほとんどが肝動脈への直接注入(動注化学療法)であり、経口、経静脈性の投与はほとんど行われていない。

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 動注化学療法には、1回注入のものと、リザーバーを使って連日繰り返し行うものと2種類ある。リザーバー動注化学療法とは、リザーバーポートを埋め込んで長時間(数日間)の化学療法を行うもの。肝臓内のがん病巣の薬剤濃度を高めて、逆に全身組織への薬剤の移行を減少させることを狙っている。low-dose FP(低用量の5-FUシスプラチンの併用)、シスプラチン単独、さらに5-FU動注とインターフェロンの皮下注を併用する方法もある。動注化学療法によるresponse rateは、全国成績では30〜40%程度だ。