肝癌肝細胞癌)は欧米に比べてアジアやアフリカに多く、また女性に比べて男性に多い癌だ。「がんの統計‘08」に掲載された日本の2006年の部位別がん死亡数をみると、男性では肺癌、胃癌に次いで第3位が肝癌となっている。女性では、胃癌、肺癌、結腸癌、乳癌に次いで第5位が肝癌だ。毎年約4万人が新たに肝癌と診断され、年間約3万4000人が死亡している。

 発症数は、1975年頃から右肩上がりに上昇していたが、この数年はほぼ横ばいになっている(下図)。今後は、発症数の横ばいが数年続き、その後、徐々に減少していくだろうと予測されている。肝癌の多くは、肝炎ウイルスへの感染がきっかけで発症するが、肝炎ウイルス感染者数が減少していることが大きな要因となっている。

(画像をクリックすると図表を拡大して表示します)

 日本における肝癌のうち、約8割はC型肝炎ウイルスHCV)の感染で生じるC型肝炎、15%がB型肝炎ウイルスHBV)によるB型肝炎から発症している。

 肝細胞癌の発癌リスクは、特にC型肝炎で解明されている。慢性肝炎の線維化のステージがF1、F2、F3と上がるにつれ、発癌リスクが年率0.5%、1.5%、3%と高まることが明らかになっている。肝硬変であるF4では年率5〜8%程度で癌が発生する。ただし、同じ肝硬変のF4であっても、ALT値が高いほど発癌リスクが高い。ALT値が高いということは壊死・炎症が続き、遺伝子変異が起こりやすいためだ。ただし、抗ウイルス治療でウイルスを完全に駆除できれば、発癌リスクも下がり、線維化も改善される。

 また、年齢も肝癌発症に影響することが示されている。感染時期が20歳前であっても40歳を越えていても、発癌するのは60歳以降が多いことが知られている。日本肝癌研究会が継続調査を行っている「第17回全国原発性肝癌追跡調査報告」(2002-2003)によれば、原発性肝癌と診断された平均年齢は男性65.5 歳、女性69.4歳となっている。

●肝癌の治療戦略

 肝癌の特徴としては、ウイルス感染が原因であることから、早期発見が可能であること。治療方針決定には肝予備能が非常に重要であること。脈管浸潤、特に門脈浸潤を生じすく、門脈浸潤から肝内転移が起こりやすいこと。切除等の根治的治療を達成しても再発しやすいこと。肝外転移が少ないことなどがある。

 肝癌の特徴に立脚し、ウイルス性肝炎に感染していれば、インターフェロン治療などでウイルスを駆除する。癌の早期発見に努める。背景となる肝治療をして再発を制御する。そして、根治後にも定期的な経過観察を欠かさず、再発の早期発見・治療をする――ことが治療戦略となる。

(画像をクリックすると図表を拡大して表示します)

 肝癌の進行度は、ステージ1からステージ4まで、4つの段階に分かれる。ステージを決める要因は、上図の(1)から(3)を満たすかどうかで決まる。早期であるほど生存率はよいが、生存率は肝予備能であるChild-Pugh gradeの影響も大きく受ける(下図)。

(画像をクリックすると図表を拡大して表示します)

 そのため、腫瘍のみのステージと肝予備能のステージを統合したステージ分類であるJISスコアが予後予測ステージとして日本では確立されている。JISスコアとは、肝機能予備力をChild-Pugh A、B、C、肝癌研究会のステージ分類をスコア化(機↓供↓掘↓犬髻▲好灰0、1、2、3)して足し合わせて分類したもの。

 肝癌診療ガイドライン(2005)による肝癌の治療アルゴリズム(下図)では、肝障害度と腫瘍数、腫瘍径で治療が決められている。肝細胞癌の治療は、根治的治療、姑息的治療、試験的治療に分類され、根治的治療、姑息的治療が標準治療となっている。これは海外でもほぼ同じだ。

(画像をクリックすると図表を拡大して表示します)