KRASの下流にある2つの情報伝達系を阻害することを目的に、膵癌患者を対象にdinaciclibとMK2206を併用投与するフェーズ1試験が開始されたことが明らかとなった。10月19日から23日まで米国ボストンで開催されているAACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics(AACR-NCI-EORTC2013)の記者会見で、米Sidney Kimmel Comprehensive Cancer CenterのBarry Nelkin氏が公表したもの。 

 KRASはRAF/MEK/ERK経路、PI3K/AKT経路、RAL経路の3つの主要な情報伝達系を活性化する。今までにRAF/MEK/ERK経路、PI3K/AKT経路を阻害する化合物の開発は既に行われているが、RAL経路の阻害剤の開発が遅れていたという。Nelkin氏らは遺伝子的阻害技術を用いて、膵癌細胞でCDK5を阻害するとRAL活性が欠損することを見出した。

 dinaciclibは、Merck社が臨床開発を進めている化合物で、CDK1、CDK2、CDK9と同様にCDK5を阻害する。Nelkin氏らは、膵癌移植マウスを用いた実験でdinaciclib単剤で抗腫瘍効果を発揮することを見出していた。

 Nelkin氏らはヒトの膵癌の状態に近いマウスモデルを用いてdinaciclibとPI3K/AKT経路の阻害剤であるMK2206を併用投与した前臨床試験の結果をAACR-NCI-EORTC2013で発表した。併用投与すると、それぞれの薬剤を投与した場合に比べ、腫瘍増殖と転移が強く抑えられることを見出した。また無治療のマウスに比べて併用投与は腫瘍の増殖を90%抑制し、14匹のマウスのうち3匹では実験終了時点で腫瘍細胞がなかったという。

 Nelkin氏らは、dinaciclibとRAF/MEK/ERK経路を阻害するSCH772984の前臨床試験の結果も発表した。モデルマウスで腫瘍増殖、転移を抑制したが、完全奏効は得られなかった。