術前化学療法で標準的な全身化学療法(PSC)を受け手術した日本人乳癌患者の術後補助療法として、S-1と同時放射線療法は安全で、実現可能であることが明らかとなった。国内で行われた臨床試験の結果、示されたもの。9月7日から9日までサンフランシスコで開催されているBreast Cancer Symposium 2013(ASCO BREAST)で、埼玉医科大学の重川崇氏によって発表された。

 臨床試験は非盲検、オープンラベル、実現可能性評価試験として行われた。主要評価項目はS-1を用いた1年間の術後補助化学療法の達成率。副次評価項目は安全性、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)だった。

 適格基準は、標準的な全身化学療法を受け、治癒切除が行われた、PS 0-1で臓器状態が適切な20歳から75歳の乳癌患者とされた。

 術後補助化学療法は、体表面積に応じて80mgから120mgのS-1を1日2回2週間投与して1週間休薬することを1コースとして、18コース行われた。投与は治癒切除後42日以内に開始された。術後放射線療法が必要と判断された場合には同時照射が認められていた。放射線照射は試験の1日目から開始され、週に5日、1日あたり1.8Gyを上限に50.4Gyまで行われた。エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)が陽性の患者の場合は内分泌療法、HER2陽性患者の場合はトラスツズマブの同時投与が認められていた。投薬は、再発または用量調整や休薬によっても制御不能な副反応が起きた場合には中止とされた。

 登録された患者は45人で43人が適格だった。年齢中央値は53歳(32-71)、ER陽性が27人、PgR陽性が17人、HER2陽性が5人だった。閉経後患者は21人。PSC前の病期はIIAが1人、IIBが17人、IIIAが4人、IIIBが6人、IIICが15人だった。同時放射線療法を受けたのは32人、タモキシフェンを投与されたのが16人、レトロゾールが投与されたのが10人、トラスツズマブが投与されたのが1人、タモキシフェンとトラスツズマブを投与されたのが1人だった。

 PSCは、アントラサイクリン系ベースの抗癌剤でその後タキサン系の抗癌剤を受けた患者が36人、アントラサイクリン系ベースが4人、タキサン系を受けたあとアントラサイクリンベースの投薬を受けたのが3人だった。PSCの効果は完全奏効が3人、部分奏効が26人、病勢安定が11人、増悪が3人だった。

 試験の結果、7人が再発のため中止となり、再発がなかった36人のうち、予定された18コースのS-1投与が完了したのは22人(61.1%)だった。主要評価項目である365日間S-1の投与ができた患者の割合は、66.4%(95%信頼区間:50.8-79.1)だった。

 投薬中止の理由で最も多かったのは患者からの中止希望で8人だった。全員が最初の6コースまでに自覚症状(吐き気、食欲不振、一般的な倦怠感)で中止を希望した。そのうち6人は開始から2コースまでに同時放射線療法を受けていた。

 比較的多く見られた副作用は、好中球減少症、血小板減少症、肝機能上昇、食欲不振、一般的な倦怠感、下痢、吐き気、口内炎、色素変化だった。グレード3の好中球減少症(8.9%)、白血球減少症(4.4%)、下痢(4.4%)が認められたが、管理可能だった。グレード4の副作用はなかった。

 1年DFS率は83.7%(95%信頼区間:69.6-92.0)、3年DFS率は66.1%(同:61.9-87.0)、1年OS率は100%(同:85.3-99.7)、3年OS率は80.9%(同:69.6-92.0)だった。

 現在、ホルモン受容体陽性乳癌患者で術前または術後にPSCを受けた患者を対象に、S-1を投与するフェーズ3試験が行われている。