Luminal A乳癌に対する術後補助化学療法は、核グレード、リンパ節転移状況、病理学的腫瘍径を用いて細分化し、再発リスクに応じて化学療法の追加を検討することが有効である可能性が示された。東邦大学医療センター佐倉病院外科学講座乳腺外科准教授の朴英進氏が明らかにした。

 Luminal A乳癌の術後補助療法はホルモン療法が主力となっているが、再発リスクが高い症例に対しては化学療法の追加を検討する必要がある。しかし、どのような症例に化学療法の追加が必要かは明確になっていない。

 そこで朴氏は、Luminal A乳癌をさらに細分化し、術後補助療法の個別化を試みた。

 対象は2008年3月から2011年6月までに、同院で策定した個別化治療戦略2008で術後補助療法を開始した、原発性乳癌のうちのLuminal A乳癌147例。

 個別化治療戦略2008におけるLuminal A乳癌の細分類とは、各臨床病理学的因子の状態について3段階で分け、1つでも合致すればより再発リスクが高いLuminal A3とし、すべての因子が低再発リスクに合致していればLuminal A1、それ以外をLuminal A2とするものである。

 そこで、Luminal A1をER陽性かつ/またはPgR陽性、HER2陰性で、核グレード1かつリンパ節転移個数0個かつ病理学的腫瘍径2cm以下のすべてに合致するものとしたところ、57例(閉経前11例、閉経後46例、平均年齢64.8歳)となった。ステージ0は2例、ステージIは43例、ステージIIAは10例、ステージIIBは2例、ステージIIIAは0例だった。

 次に、Luminal A2をER陽性かつ/またはPgR陽性、HER2陰性で、核グレード2またはリンパ節転移個数1〜3個または病理学的腫瘍径2.1〜5cmのうち1つ以上合致するものとしたところ、56例(閉経前26例、閉経後30例、平均年齢56.2歳)となった。ステージ0は0例、ステージIは26例、ステージIIAは23例、ステージIIBは6例、ステージIIIAは1例だった。また、核グレード2は、48例、核グレード1は18例、リンパ節転移個数1〜3個だったのは28例、0個だったのは28例、病理学的腫瘍径2.1〜5cmだったのは39例、 2cm以下だったのは17例だった。

 さらに、Luminal A3をER陽性かつ/またはPgR陽性、HER2陰性で、核グレード3またはリンパ節転移個数4個以上または病理学的腫瘍径5cm以上のうち1つ以上合致するものとしたところ、34例(閉経前9例、閉経後25例、平均年齢56.6歳)となった。ステージ0は0例、ステージIは5例、ステージIIAは7例、ステージIIBは13例、ステージIIIAは4例、ステージIIIBは1例、ステージIIICは4例だった。核グレードが3だったのは21例、グレード2だったのは5例、グレード1だったのは8例。リンパ節転移個数4個以上だったのは20例、1〜3個だったのは8例、0個だったのは6例だった。病理学的腫瘍径5cm以上だったのは7例、2.1〜5cmだったのは24例、2cm以下だったのは3例だった。

 Luminal A乳癌の術後補助療法も細分類ごとに変えて、Luminal A1乳癌にはLH-RHアナログ、タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬によるホルモン療法を5年間施行、Luminal A2乳癌にはLH-RHアナログ、タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬によるホルモン療法に加えてUFT療法を5年間施行、Luminal A3乳癌には、エピルビシン+シクロホスファミド(EC療法)+タキサン系抗癌剤逐次療法を6カ月行った後、LH-RHアナログ、タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬によるホルモン療法を4.5年間施行した。

 追跡の結果、Luminal A乳癌147例全体での5年累積健存率は79.5%、累積生存率は94.5%だった。細分類別に見てみると、Luminal A1乳癌は57例中、死亡は1例で、5年累積健存率は98.2%、累積生存率は98.2%、Luminal A2乳癌では56例中、再発生存が3例、死亡1例で、5年累積健存率、累積生存率はそれぞれ84.7%、88.1%。Luminal A3乳癌では34例中、再発生存が11例、死亡1例で、それぞれ42.9%、96.7%だった。

 また、個別化治療戦略2008施行以前と以後の5年累積生存率を比較したところ、Luminal A1乳癌ではそれぞれ97.8%、98.2%、Luminal A2乳癌ではそれぞれ90.1%、88.1%、Luminal A3乳癌ではそれぞれ93.3%、96.7%だった。Luminal A1とA3乳癌は、個別化治療戦略2008の施行により5年累積生存率が改善したが、Luminal A2乳癌では改善が認められなかった。この理由として、Luminal A2乳癌にはLuminal A1乳癌よりLuminal A3乳癌に近い症例が多く含まれており、ホルモン+UFT療法では術後治療として物足りないのかもしれないと朴氏は話す。

 安全性では、Luminal A1、A2ではグレード3以上の有害事象はなく、Luminal A3では34例中、EC療法時にグレード3以上の好中球減少が2例に認められた。

 これらの結果から朴氏は、Luminal A乳癌の術後5年成績においてLuminal A2、A3乳癌の累積健存率が不良であったこと、晩期再発も考慮してLuminal A乳癌は5年以降も観察を続けるべきと指摘し、とくにLuminal A2乳癌の治療戦略にさらなる検討が必要であると述べた。

 なお、本研究の要旨は、6月に開催された第21回日本乳癌学会学術総会で発表した。