進行肝細胞癌に対するソラフェニブ投与は、肝機能がChild Pugh Bの患者においてはベネフィットとリスクを慎重に考慮して可否を決定する必要があることが示された。国際共同非介入試験GIDEONの、最終解析における日本人サブグループ解析の結果から明らかになったもので、7月11日から東京・新宿で開催された第49回日本肝癌研究会で、武蔵野赤十字病院消化器科の泉並木氏が発表した。

 GIDEON試験は、ソラフェニブが投与された肝細胞癌患者を対象とした国際共同前向き非介入試験。世界39カ国から378施設、日本からは40施設が参加している。2011年4月に登録が終了し、世界で3371例、日本からは517例が登録された。主要評価項目は安全性で、副次評価項目として有効性や治療期間などが設定されている。

 日本人における投与開始時のChild-Pugh分類別の患者背景は、Child-Pugh A群(以下Child A群、432例)群は男性82.2%/女性17.8%、Child-Pugh B群(以下Child B群、58例)はそれぞれ70.7%/29.3%で、Child B群で女性が多い傾向にあった。年齢(中央値)は約70歳で、ECOG PSが0だったのは、Child A群81.9%、Child B群67.2%、PSが1だったのはChild A群15.0%、Child B群29.3%、PSが2だったのはChild A群1.2%、Child B群0%で、Child B群でPS 1だった症例が多い傾向にあった。

 BCLCステージに2群間で差はなかったが、TNMステージ分類では、ステージI、ステージII、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIC、ステージIVが、Child A群ではそれぞれ2.8%、28.0%、18.5%、2.1%、4.9%、42.6%、Child B群ではそれぞれ0%、19.0%、24.1%、1.7%、1.7%、53.4%で、Child B群でステージIV例が多い傾向にあった。

 投与開始時のChild-Pugh分類別のソラフェニブ投与状況は、投与開始用量(1日量)が800mg、600mg、400mg、200mgだったのが、Child A群でそれぞれ46.3%、1.9%、47.0%、4.6%、Child B群ではそれぞれ44.8%、0%、53.4%、1.7%で、Child B群で800mg開始が少なく、400mg開始が多い傾向にあった。

 1日平均投与量(中央値)は、Chidl A群が425mg、Child B群が400mgで、投与期間(中央値)はChild A群17.4週、Child B群7.6週、休薬期間などを除いた実投与期間(中央値)はChild A群15.7週、Child B群6.5週だった。1日投与量に2群間で大きな差はなかったが、投与期間および実投与期間はChild B群で短い傾向にあった。

 有害事象については、全グレードの有害事象/薬剤関連有害事象が、Child A群で94.9%/88.2%、Child B群94.8%/86.2%、グレード3/4の有害事象/薬剤関連有害事象は、Child A群で45.1%/37.3%、Child B群は39.7%/41.4%、重篤な有害事象/薬剤関連の重篤な有害事象は、Child A群37.0%/16.2%、Child B群は69.0%/32.8%だった。また、投与中止に至る有害事象はChild A群で38.7%、Child B群で51.7%、死亡はChild A群で11.8%、Child B群で34.5%だった。

 Child-pugh分類別の副作用の発現頻度のうち、注目されたのは、手足皮膚反応(Child A群49.5%、Child B群37.9%)、高血圧(同25.5%、15.5%)、脱毛(21.3%、5.2%)、発疹/落屑(15.7%、8.6%)、嗄声(11.3%、6.9%)、血小板低下(10.0%、5.2%)、掻痒(5.1%、1.7%)、嘔吐(1.9%、5.2%)、臨床検査値異常(1.4%、6.9%)だった。Child A群で副作用が多い傾向が認められたが、これはChild A群はChild B群に比べて総投与量が多かったことに起因すると考えられた。そこで、人年法(発現件数/人/年)による比較を行った結果、副作用発現頻度はChild B群の方が全体的に高い傾向にあり、2群間で差がある傾向が認められたのは食欲不振(Child A群0.33、Child B群0.64)、疲労(同0.32、0.64)、肝機能障害(0.07、0.37)だった。

 肝関連副作用の発現頻度で2群間に差がある傾向が認められたのは、肝機能障害(Child A群3.7%、Child B群12.1%)、低アルブミン血症(同2.8%、6.9%)、肝性脳症(2.1%、5.2%)だった。重篤な副作用の発現頻度は、肝機能障害(1.4%、8.6%)、肝性脳症(1.2%、3.4%)、胃潰瘍(0.5%、3.4%)、臨床検査値異常(0.5%、3.4%)だった。

 Child-Pugh分類別の全生存期間(OS)と無増悪期間(TTP)について検討した結果、OSについてはChild A群17.6カ月、Child B群4.9カ月、TTPについてはChild A群3.7カ月、Child B群は2.3カ月だった。

 これらの結果から泉氏は、Child A群に比べてChild B群はソラフェニブ投与期間は短かったこと、有害事象や副作用の発生頻度は2群で同等だったものの、重篤な副作用、投与中止に至る有害事象はChild B群で多かったこと、OSはChild B群に比べてChild A群で長かったが、TTPは2群間で大きく異ならなかったとまとめた。

 そして泉氏は、「有害事象発生頻度は全体として同程度だったが、Child B患者では投与期間は短く、薬剤関連副作用や肝関連副作用の発生頻度はChild A患者と比較して高い傾向にあることから、Child B患者においてはベネフィットとリスクを慎重に考慮してソラフェニブ投与の可否を決定する必要があると考えられる」と指摘した。