スイスRoche社は2013年6月28日、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が同日、皮下注射処方のトラスツズマブ(「ハーセプチン」)をHER2陽性乳癌患者の治療に用いることを承認するよう勧告したと発表した。

 現時点では、トラスツズマブは30-90分かけて静脈内投与されているが、皮下注射処方になると、投与に要する時間は2-5分に短縮され、患者の時間的な負担は大きく減り、ヘルスケアリソースの節約にもなると期待される。

 皮下注射処方の開発には、米Halozyme Therapeutics社が開発したEnhanze技術が用いられた。トラスツズマブ皮下注射には、賦形剤として組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)が添加されており、この酵素が皮下の細胞間に存在するヒアルロン酸を可逆的に破壊するために、同時に注射された薬剤や液体の吸収と分散が容易になる。これにより、液量が多くても痛みなしに注入することが可能になる。また、一過性に200ナノメートル程度の大きな分子も細胞外マトリクスを通過できるようになるが、rHuPH20の作用は投与後24時間で消失する。

 トラスツズマブ皮下注射は固定用量で、5mLの注射液に600mgのトラスツズマブを含む。

 CHMPは、フェーズIII HannaHスタディの結果に基づいて、今回の判断を下した。試験結果はLancet Oncology誌に2012年に報告された。

 この試験はオープンラベルの無作為化フェーズIIIで、HER2陽性の早期乳癌女性596人を登録、静注処方または皮下注射処方のトラスツズマブに割り付けて、術前には化学療法とともに、術後はトラスツズマブのみを投与し、薬物動態、有効性、安全性を比較したもの。得られた結果は、有効性における皮下注射処方製品の非劣性を確認した。安全性にも差は無かった。