米Yale大学のRoy S. Herbst氏らは、T細胞に発現しているPD-1(Programmed death 1)のリガンドであるPD-L1を標的とするモノクローナル抗体製剤MPDL3280Aをさまざまな固形癌の患者に投与したフェーズ1試験で好結果を得た。詳細は、2013年5月31日から6月4日まで開催される米臨床腫瘍学会(ASCO)の第49回年次総会で、6月3日に口頭発表される。

 PD-1は、T細胞が細胞死を誘導する際に発現が増強される遺伝子として発見された。受容体をコードしており、癌細胞表面にしばしばPD-1の過剰発現が見られる。この受容体にリガンドであるPD-L1が結合すると、T細胞の働きが抑制され、癌細胞は免疫系の目を逃れて生き残る機会を得る。そこでPD-1とPD-L1の結合を抑えれば、T細胞による癌細胞への攻撃は再開されると考えられ、PD-L1を標的とする抗体が開発された。この作用機序を持つ免疫治療はさまざまな癌に有効である可脳性を持つ。

 Herbst氏らが用いたヒトモノクローナル抗体医薬MPDL3280Aは、抗体のFc領域に修飾を加えることにより、これまでに開発されたPD-L1またはPD-1を標的とする薬剤候補に比べ高い安全性と有効性を持つよう設計されている。

 フェーズ1試験は、局所進行型または転移性の固形癌で、前治療後に進行を見た人々を登録、3週間ごとにMPDL3280Aを静脈内投与した。主要評価指標はRECIST基準に基づく奏効率に設定されていた。

 2013年1月10日までに171人について安全性を評価した。投与期間の中央値は127日(範囲1-330日)だった。39%の患者がグレード3/4の有害事象を経験したが、全体として忍容性は高かった。

 非小細胞肺癌、メラノーマ、腎細胞癌、大腸癌、胃癌といった固形癌の患者に腫瘍縮小が見られた。全奏効率は21%(122人中25人)になった。特に肺癌とメラノーマ患者の治療に対する反応率が高かった。初回投与から数日で腫瘍縮小が見られた患者も数人いた。24週の無増悪生存率は44%だった。

 一部の患者から標本を得て、腫瘍組織のPD-L1発現レベルを調べた。PD-L1陽性患者の奏効率は39%(33人中13人)で、進行した患者の割合は12%(33人中4人)だった。PD-L1陰性患者では、奏効率は13%(61人中8人)、進行は59%(61人中36人)になった。PD-L1の発現がMPDL3280Aに対する反応性にどのような影響を与えるのかは現時点では明瞭ではない。より精度の高いPD-L1検査を利用すれば、この分子の発現レベルと治療に対する反応性の関係が明らかになると研究者たちは考えている。

 アブストラクトのためのデータ収集時点では、治療に反応した患者は全員が、病勢安定の状態にあるか、引き続き改善を見ていた。

 研究を支援しているGenentech社は、すでに複数のフェーズ2試験とフェーズ3試験を計画している。目的はこの薬剤の抗癌活性を確認すること、そしてPD-L1診断検査の有用性を評価することにある。また、同社は、他の癌治療薬と併用することにより、現行の標準治療を超える反応が得られるかどうかも検討したいと考えている。