p70S6キナーゼ阻害剤であるLY2584702が日本人の癌患者で有用な可能性が明らかとなった。進行固形癌を対象にしたフェーズ1試験の結果、安全性が確認され、一部で抗腫瘍効果が認められた。2013年4月6日から10日までワシントンで開催されているAmerican Association for Cancer Reserach(AACR2013)で、国立がん研究センター東病院の土井俊彦氏によって発表された。

 p70S6キナーゼはAKT経路の下流にあり、複数の癌種で活性化しているという。

 フェーズ1試験は、LY2584702の日本人固形癌患者における安全性と忍容性を評価するために行われた。患者は1サイクルの1日目に1回投薬を受け、3日目から30日目まで同じ用量を1日2回投薬され、用量制限毒性(DLT)発現の評価が行われた。その後は1サイクル28日で1日2回投与された。安全性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、効果についても評価された。

 最初の3人の患者は50mg1日2回投与群に割り付けられ、その後6人が75mg1日2回投与群に割り付けられた。投薬は病勢が進行するか、不耐容の副作用が発現するまで継続された。患者は大腸癌、食道癌、胃癌患者などが含まれていた。

 試験の結果、全患者がDLTを発現することなく、1サイクル目を完了した。重篤な副作用や投薬中止となる副作用はなかった。50mg1日2回投与群の2人の患者でグレード3の副作用が認められ、1人はアルカリホスファターゼ上昇で、もう1人はビリルビン上昇だった。出血を示唆する症例はなかった。多く見られた副作用は吐き気(7人)、食欲低下(3人)、不快感(3人)などだった。

 CmaxとAUC は、患者数が少なくばらつきが大きかったが、既に実施された米国のフェーズ1試験の結果と一致していた。

 完全奏効(CR)、部分奏効(PR)は認められなかったが、大腸癌患者1人(縮小率14.5%)と食道癌患者1人(同11.1%)で長期間の病勢安定(それぞれ137日と183日)が認められた。また2人とも50mg投与群だった。PDバイオマーカー(pS6RP、pAKT、pRAS40)の発現には意味のある影響はなかったが、5人の患者で同様なキネティクスパターンを示した。5人の患者のうち2人の患者ではPDバイオマーカーのダウンレギュレーションがみられた。

 LY2584702は海外の試験で見られた副作用と開発優先順位の関係で、現在開発は停止している。