HER2陽性の転移を有する乳癌患者に対するトラスツズマブDM1(T-DM1)の効果は、HER2発現量が高い群でより高いことが明らかとなった。また、PIK3CAの変異によって、効果は影響を受けないことも示された。T-DM1がカペシタビンとラパチニブ併用療法に比べ、全生存期間(OS)を有意に改善することを示したフェーズ3試験EMILIAのサブ解析で分かったもの。成果は2013年4月6日から10日にワシントンで開催されているAmerican Association for Cancer Reserach(AACR2013)で、米Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのJose Baselga氏によって発表された。

 EMILIA試験は、HER2陽性の局所進行または転移を有する乳癌で、トラスツズマブとタキサン系抗癌剤による治療歴がある患者を対象に、T-DM1を投与する群(495人)とカペシタビンとラパチニブ(496人)を併用投与する群を比較した。

 T-DM1は3週おきに3.6mg/kgが投与された。カペシタビン+ラパチニブ群では3週おきにカペシタビン1000mg/m2を1日2回、第1日から第14日まで投与し、ラパチニブ1250mg/日を連日投与した。

 試験の結果、無増悪生存期間(PFS)の中央値は、カペシタビン+ラパチニブ群は6.4カ月、T-DM1群は9.6カ月、OS中央値は、カペシタビン+ラパチニブ群が25.1カ月であるのに対し、T-DM1群は30.9カ月と有意にT-DM1群が優れていた。

 今回行われたサブ解析では、EMILIA試験に参加した患者から腫瘍組織を採取し、HER2mRNA発現量を指標にHER2の発現レベルを調べ、治療効果との関係を調べた。HER2mRNA発現量が中央値よりも高い群を高HER2群(197人)、中央値以下を低HER2群(230人)とした。

 サブ解析の結果、T-DM1群の高HER2群のOS中央値34.1カ月に対して、低HER2群は26.5カ月で、高HER2群でより効果が高かった。カペシタビン+ラパチニブ群の高HER2群のOS中央値は24.8カ月、低HER2群は23.7カ月だった。高HER2発現群の患者は、T-DM1を受けた患者で、カペシタビン+ラパチニブを受けた患者よりも死亡のリスクは47%減少していた。

 T-DM1群の高HER2群のPFS中央値は10.6カ月、低HER2群は8.2カ月で、高HER2群でより効果が高かった。カペシタビン+ラパチニブ群の高HER2群のPFS中央値は6.9カ月、低HER2群は6.4カ月だった。

 さらに研究グループはPIK3CAの変異と効果の関係を調べた。従来PIK3CAに変異があるとトラスツズマブなどの抗HER2療法があまり有効でないことが知られていた。しかし、今回の解析の結果、T-DM1群ではPIK3CAに変異がある患者(40人)のPFS中央値は10.9カ月、野生型(93人)の中央値は9.8カ月で有意な減少は認められないことを見出した。一方、カペシタビン+ラパチニブ群ではPIK3CAに変異がある患者(39人)のPFS中央値は4.3カ月、野生型(87人)の中央値は6.4カ月で変異型で短かった。

 また、EGFR、HER3、PTENの発現量とT-DM1の効果には明らかな関連はなかった。