HER2陽性乳癌の術後補助化学療法を行い、その後1年間トラスツズマブを投与する場合、リン酸化HER2(pHER2:pY1248)の発現レベルが高いことが予後を悪くさせる因子である可能性が示唆された。川崎医科大学で2005年から2010年にHER2陽性乳癌の術後補助化学療法を行い、その後に1年間トラスツズマブ投与を受けた患者87人のデータを調べた結果示されたもの。3月13日から16日まで開催されている13th St.Gallen International Breast Cancer Conference2013で、川崎医科大学の紅林淳一氏によって発表された。

 87人の患者はすべてハーセプテストで3+かつ/またはFISH陽性の乳癌患者だった。文献上で報告されているHER1、pY1248、HER3、HER4、ALDH1、p53、E-カドヘリン、PTEH、GRB7について免疫染色法で発現を調べ、Kaplam-Meier/logrank testとCox比例ハザードモデルを用いて予後因子を単変量、多変量解析を行った。

 87人の患者の年齢中央値は54歳(24-87)、観察期間中央値は39カ月(4-92)。乳房温存術を受けた患者は36%で腫瘍径平均値は2.1cm、リンパ節転移陽性は40%だった。9人の患者で再発が起こり、1人が乳癌で死亡した。

 単変量解析の結果、ハーセプテストのスコアが2+であることが無再発生存(RFS)の有意な予後悪化因子として見出された。pHER2、p53の高レベル発現、E-カドヘリン低レベル発現には関連傾向が認められた。

 多変量解析の結果、pHER2、p53の高発現、HER2の低発現がRFSの有意な予後悪化因子として同定された。pHER2のハザード比は5.9(95%信頼区間:1.8-37.1)、p=0.040だった。p53のハザード比は4.0(95%信頼区間:0.918.5)、p=0.080だった。HER2のハザード比は8.1(95%信頼区間:1.1-31.3)、p=0.007だった。

 またpHER2の発現とHERファミリーの発現の関連を調べたところ、HER3の発現スコアが高い患者でpHER2の発現が高いことも見出された。

 さらにHER2発現スコアが2+でpHER2が高発現だった5人中3人で再発が起きていた。

 リンパ節の状態など他の臨床病理学的因子には予後との関連は見出されなかった。

 紅林氏は、レトロスペクティブな解析であり、少数例であることから、pHER2のマーカーとしての意義の評価は更なる検討が必要であるとしたが、「HER2とHER3のヘテロダイマーがpHER2を上昇させ予後悪化に関連している可能性がある。もしそうであれば、HER2が2+でHER3が高発現な患者ではトラスツズマブのみよりもトラスツズマブとペルツズマブの併用の方が有用であるかもしれない」と語った。