切除不能進行膵癌に対する、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)エピトープペプチドワクチンとゲムシタビンの併用は、プラセボ+ゲムシタビンと比べて生存期間の延長を示すことができなかった。1月24日からサンフランシスコで開催された2013 GASTROINTESTINAL CANCERS SYMPOSIUM(ASCO GI)で、和歌山県立医科大学第2外科の山上裕機氏が発表した。

 ただし、少数例ではあるが、エピトープワクチン注射に特有の反応だった潰瘍が発現したグループは、潰瘍が発現しなかったグループに比べて生存期間が延長しており、また潰瘍と生存期間に相関関係があることが示された。

 前臨床試験において、血管内皮増殖因子(VEGF)の阻害は膵癌の増殖や転移に関わることが知られている。同グループは、VEGFR2のエピトープペプチドを使ったワクチンを用いたフェーズ1試験で良好な結果が得られたため、多施設共同フェーズ2/3試験を行った。

 試験に用いた薬剤はelpamotideで、HLA-A24:02拘束性のVEGFR2のエピトープペプチド。

 局所進行性、転移性、もしくは切除不能な未治療膵癌153例を、elpamotide 4mg/mLをIFAアジュバント1mLと混合した製剤とゲムシタビン(1000mg/m2)を併用した実薬群(100例)、生理食塩水+IFAアジュバントにゲムシタビンを併用するプラセボ群(53例)に2:1でランダムに割り付けた。治療は病勢進行まで続けられた。

 治療スケジュールは、elpamotideもしくはプラセボを週1回、4週間投与し(1日目、8日目、15日目、22日目)、ゲムシタビンは1日目、8日目、15日目に投与するものを1サイクルとした。

 登録時患者背景は、2群間で差はなく、20〜64歳が実薬群59%、プラセボ群47.2%、65〜90歳がそれぞれ41%、52.8%。男性が約6割で、ステージIVaが約25%、ステージIVbが約75%だった。リンパ球が18%未満だったのは2群とも約32%で、18%以上だったのが68%だった。

 薬剤関連有害事象については、グレード3/4の有害事象として、実薬群において白血球減少(31%)、血小板減少(15%)、貧血(22%)、好中球減少(48%)、食欲不振8%、AST上昇3%、注射部位反応2%が認められたが、プラセボ群でも同様に発現しており、有意な差ではなかった。

 全生存期間(OS)を評価した結果、OS中央値はプラセボ群8.54カ月に対し、実薬群8.36カ月で、差は認められなかった。無増悪生存期間や病勢コントロール率も2群間で差はなかった。

 次に注射部位反応について検討した結果、実薬群において潰瘍が10例に認められ、プラセボ群には認められなかった。紅斑や硬化などの注射部位反応については実薬群、プラセボ群ともに認められたため、潰瘍がelpamotideに特有の反応であると考えられた。

 そこで潰瘍の形成の有無別にOSを検討した結果、実薬群のうち潰瘍が認められなかった90例のOS中央値が8.15カ月だったのに対し、潰瘍が認められた10例のOS中央値は16.0カ月と延長していた。実薬群で潰瘍が認められたグループのハザード比は、実薬群で潰瘍なしグループに対して0.713、プラセボ群に対して0.740だった。

 潰瘍と硬化を併せた注射部位反応の発現とOSに関して相関関係を解析した結果、強い相関が認められた。ただし、長期にelpamotideを投与した結果として潰瘍が認められた可能性があるため、3カ月時点における解析も行ったが、同じく注射部位反応と生存に相関関係が認められた。

 3カ月以上生存した患者において、注射部位反応が認められた患者の1年生存率は47%で、注射部位反応が認められなかった患者の20%に比べて良好だった。

 これらの結果から山上氏は、elpamotideは安全で、忍容性があり、elpamotideに特有であった注射部位における潰瘍の発現は生存期間と有意に相関するとまとめた。現在、同グループは他のエピトープペプチドと混合した製剤を用い、膵癌を対象としたフェーズ3試験(COMPETE-PC試験)を進めるとともに、本試験の血清を対象に潰瘍の発現を予測する因子の探索を進めている。