内視鏡手術支援ロボットを使用した胃切除術(robotic gastrectomy:RG)と腹腔鏡下胃切除術(laparoscopic gasrectomy:LG)の長期転帰の比較から、全生存率(OS)や無再発生存率(DFS)は同等で、RGの長期の腫瘍学的な転帰(oncologic outcome)は受容可能と考えられる結果が単施設の検討から示された。1月24日から米サンフランシスコで開催されたGastrointestinal Cancer Symposium(ASCO GI)で、韓国Yonsei University College of MedicineのWoo Jin Hyung氏が発表した。

 内視鏡支援ロボットは、多関節を有し7自由度があるエンドリスト、高画質の3D画像、術者の手の震えを抑制するフィルタリング機能、手の動きを縮尺し細かい操作を可能にするスケーリング機能などの特徴から、複雑で高度な最小侵襲手術(MIS)の実施を容易にする。

 胃癌に対するRGの利点は、術中の出血量が少なく、術後の入院期間が短縮し、ラーニングカーブの影響が少ないことなどで、欠点は、費用が高いこと、手術時間が延長することなどである。費用効果、長期の腫瘍学的な転帰についてはまだ結論が得られていない。

 そのためHyung氏らは、RG施行後の長期転帰をLGと比較し評価した。前向きにデザインされたデータベースを用いて後ろ向きに解析を行い、患者背景、手術の転帰、OS、DFS、再発率および再発パターンを比較した。
 
 Yonsei University Health SystemのSeverance Hospitalでは、組織学的に確認された胃腺癌でcT1-3N0-1M0の患者をRGまたはLGの適応としており、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応となる患者は除外される。RGまたはLGの選択は、リスクや費用も含む十分な説明を受けた後、患者が行っている。
 
 2005年7月から2009年12月までに862人にMISが行われ、このうちRGは317人(RG群)、LGは545人(LG群)に行われた。今回評価対象となったのは、RG群313人(平均年齢54.5歳、男性188人)、LG群524人(同59.3歳、326人)だった。

 全例で追跡が可能で、追跡期間中央値は50カ月だった。追跡は最初の2年間は3カ月毎、その後3年間は6カ月毎に行い、1年に1回以上、CTと食道胃十二指腸内視鏡検査を行った。術後補助療法は5-FUを含むレジメンで行われ、pT3(SS)N0を除くII期以上の進行例に推奨された。
 
 RG群は、LG群と比べて平均年齢が若く(p<0.001)、胃全摘術が多く行われ(26.8%対19.7%、p=0.016)、手術時間が長かった(219分対149分、p<0.001)。
 
 術後、腸の機能回復に要した日数は、RG群はLG群と比べて少なかった(2.8日対3.0、p=0.029)。術後の入院期間、術後合併症の発生率に両群間で差はなかった。

 病理学的所見で漿膜下組織、漿膜に浸潤を認めた症例は、RG群はLG群と比べて多く、RG群ではいずれも7.7%、LG群ではそれぞれ4.6%と5.0%だった(p=0.029)。リンパ節転移の平均数もRG群はLG群と比べて多かった(1個対0.6個、p=0.042)。
 
 病期の分布では、両群ともにI期が最も多く、RG群70.3%、LG群84.0%だったが、RG群ではLG群と比べてIII期の占める割合が高かった(9.9%対4.4%、p=0.006)
 
 術後再発は、RG群17人(5.4%)、LG群19人(3.6%)で、両群間に有意差はなかった。病期ごとの再発率、再発パターンにも差はなかった。

 全例の生存期間の比較では、両群は同等であり、5年OSはRG群94.0%、LG群93.5%、5年DFSはそれぞれ92.1%と92.4%だった(それぞれp=0.670、p=0.882)。病期ごとの比較では、I期の5年OSはRG群98.4%、LG群95.5%となり(p=0.066)、5年DFSはそれぞれ97.2%と94.8%だった(p=0.170)。II期、III期の5年OSおよびDFSは両群で同等だった。
 
 多変量解析では、OSに対するRGとLGのハザード比は1.63(95%信頼区間:0.85-3.15)、DFSに対するハザード比は1.31(同:0.75-2.30)で、いずれも有意差はなかった(それぞれp=0.144、p=0.343)。
 
 Hyung氏は「今後、より進行例での検討や、費用、QOLの検討を前向きな方法で行う必要がある」と話した。