肝細胞癌患者に対する肝動脈化学塞栓術(TACE)とTSU-68(Orantinib)の併用治療を評価したフェーズ2試験で、TSU-68群は観察群に比べて統計学的に有意ではないものの無増悪生存期間(PFS)を延長する傾向にあり、さらに肝機能がChild-Pugh Aで、VCAM-1、ELAM-1、IL-8、血小板由来増殖因子(PGDF)BBなどが高値の例では低値の例に比べて有意なPFSの延長が得られることが示された。9月14日からベルリンで開催されたInternational Liver Cancer Association(ILCA)の第6回年次集会で、近畿大学消化器内科の工藤正俊氏が発表した。

 TSU-68は血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)-2のチロシンキナーゼを阻害する血管新生阻害薬。進行肝細胞癌を対象としたフェーズ1/2試験では、推奨用量は1日400mgで、さまざまな治療を受けた後のChild-Pugh Bの患者でも安全で、有効性が期待できる結果が得られていた。奏効率は8.6%、病勢コントロール率は51.4%、腫瘍壊死率は25.7%で、PFS中央値は2.1カ月と報告されている。

 そこでフェーズ2試験では、TACE実施から14日以内の患者を対象に、TSU-68群(1日400mg)と観察群に割り付けて効果を評価した。試験は病勢進行となった時点で終了し、PD後はTACE治療を受けられるというデザインとした。主要評価項目はPFSで、副次評価項目は安全性、奏効率、腫瘍マーカーの変化、全生存期間(OS)とした。

 試験の適格基準は、手術、移植、ラジオ波焼灼術(RFA)や経皮的エタノール注入療法(PEIT)などが適応外の患者で、腫瘍径10mm超80mm未満、脈管浸潤なし、肝外転移なしとした。また、肝機能分類でChild-Pugh AまたはB、ECOG PSは0-2とした。

 TSU-68群(50例)と観察群(51例)の患者背景は同等で、ステージ3が47.1%、ステージ2が37.3%、背景肝はHCVが66.7%、HBVが5.9%、その他が27.5%だった。Child-Pugh Aが88.2%、Child-Pugh Bは11.8%だった。

 追跡の結果、PFS(中央値)は、観察群122日(4.0カ月)だったのに対し、TSU-68群は157日(5.2カ月)で、ハザード比0.699(0.450-1.088、p=0.054)と、TSU-68群で延長する傾向があったが、統計学的には有意な差ではなかった。OSはTSU-68群780日(25.6カ月)、観察群は到達せずで、2群間で有意な差はなかった。

 グレード3以上の有害事象は少なかったが、TSU-68群でグレード3以上の一過的なAST、ALT上昇の頻度が高かった。

 サブグループ解析の結果、Child-Pugh Aではハザード比0.60(95%信頼区間:0.37-0.98)と有意にTSU-68群が良好だった。

 Child-Pugh Aのグループにおいて、登録時の各種血管由来因子とPFSとの相関を検討した結果、t-PAが平均以下のグループではハザード比0.48と有意にTSU-68群でPFSが良好で、一方、VCAM-1、ELAM-1、IL-8、PDGF-BBが平均以上のグループでハザード比がそれぞれ0.50、0.49、0.43、0.46と有意にTUS-68群でPFSが良好だった。

 工藤氏は、「Child-Pugh Aの患者に対してTSU-68はPFSを改善し、いくつかの血管新生因子の値とPFSとの間に相関が見られた。この結果を受け、現在、日本、韓国、台湾の患者を対象としたフェーズ3試験を実施中だ。また、TSU-68は他のチロシンキナーゼ阻害薬と比べて手足皮膚症候群や高血圧の有害事象は認められなかったが、これは他のチロシンキナーゼ阻害薬がVEGFRを標的とするのに対し、TSU-68はPDGFRを対象としていることに起因すると考えられる」と語った。