米国の癌治療の実践状態が分かるウェブベースの電子医療記録システムであるiKnowMed EHRのレトロスペクティブな解析から、乳癌の術後補助化学療法を受けた患者の急性骨髄性白血病(AML)/骨髄異形成症候群(MDS)のリスクは、術後補助化学療法を受けなかった乳癌患者と比べて、上昇はしていないことが明らかとなった。ただし年齢が70歳超の高齢になることと、アントラサイクリン系抗癌剤を含むレジメンを治療した場合には有意にリスクが上昇した。また、好中球増殖因子であるpegfilgrastimの使用には有意な差はなかった。

 成果は9月13日から15日に米サンフランシスコで開催されたBreast Cancer Symposium 2012(ASCO Breast2012)で、The US Oncology Network Pathways Task Force and Clinical Content TeamのN.Denduluri氏によって発表された。

 研究グループはiKnowMed EHRから、2007年から2010年にステージ1〜3の乳癌と診断され、少なくとも5回病院を訪れ、2012年2月まで経過観察された患者について解析した。術後補助療法の有無、レジメン、pegfilgrastim使用の有無、年齢で層別化し、AML/MDS発症の特徴を模索した。

 対象となったのは全体で2万900人。観察期間中央値は2.8年(1.2-5.2)だった。54%にあたる1万1295人が化学療法を受け、そのうちpegfilgrastimの投与を受けなかった患者2466人ではAML/MDSが1件発生した。pegfilgrastimの投与を受けた8829人ではAML/MDSが11件発生した。12人のうち8人がアントラサイクリン系抗癌剤の投与を受けていた。化学療法を受けなかった患者9605人ではAML/MDSが16件発生した。AML/MDSの発生率は化学療法を受けた患者で0.106%、受けなかった患者で0.167%で、有意な差はなかった(p=0.26)。

 化学療法を受けた患者でAML/MDS発症までの期間中央値は1.8年、細胞遺伝学的異常があったのは11人中8人、なかったのは3人だった。化学療法を受けなかった患者でAML/MDS発症までの期間中央値は2.2年、細胞遺伝学的異常があったのは15人中3人、なかったのは12人だった。

 化学療法を受けた患者の診断時の年齢中央値は54歳(21-92)で受けなかった患者の64歳(21-100)と有意な差があった。観察期間中央値は、化学療法を受けた患者が2.7年(1.2-5.2)、受けなかった患者は3.0年(1.2-5.2)。化学療法を受けた患者の診断時の病期はステージ1が2948人(26%)、ステージ2が5776人(51%)、ステージ3が2571人(23%)、受けなかった患者の診断時の病期はステージ1が6650人(69%)、ステージ2が2489人(26%)、ステージ3が466人(5%)で、化学療法を受けた患者で病期が進んでいる患者が多かった。エストロゲン受容体は、化学療法を受けた患者で陰性が3603人(32%)、陽性が7425人(66%)、不明が267人(2%)で、受けなかった患者で陰性が659人(7%)、陽性が8589人(89%)、不明が357人だった。

 多変量解析の結果、化学療法を受けた患者でAML/MDSの発症について統計学的に有意な差がついたのは、2因子。1つは年齢(70歳以下と70歳超)でハザード比は7.06、p=0.002だった。もう1つはアントラサイクリン系抗癌剤の使用でハザード比3.89、p=0.043だった。