インスリン抵抗性肝癌治療後の異所性再発を促進する可能性が示された。7月20日から金沢市で開催された第48回日本肝癌研究会で、北九州市立医療センター内科の重松宏尚氏が発表した。

 近年、肝発癌や肝癌治療後の再発に、肥満や糖尿病、インスリン抵抗性などが関与すると報告されている。

 そこで重松氏らは、5cm以下単発肝癌の異所性再発に寄与する因子について、特に代謝因子に注目して検討した。

 対象は、2007年1月から2010年12月末までに同院で初回治療を行った5cm以下単発肝癌85例。治療後の異所性再発率を検討した。

 患者背景は年齢67.2歳、男性51例、女性34例。背景肝はHCVが53例、HBVが17例、非B非Cが15例で、Child-Pugh Aが68例、Bが17例だった。腫瘍サイズは22.3mm(10-50)、ステージIが42例、ステージIIが43例で、初回治療が切除だったのは27例、RFAが48例、TACEが10例だった。観察期間は35.5カ月(18-63.0)。

 代謝因子については、BMIが23.6kg/m2(16.6-32.0)、内臓脂肪面積が100.6cm2(16.4-260)、空腹時血糖値100.1mg/dL(61-139)、血中インスリン12.0μU/mL(2.1-63)、HOMA-IRは2.94(0.4-14)、糖尿病合併例は15例、うちインスリン治療例2例、経口薬治療例10例(うちSU薬7例)、治療なしは3例だった。

 累積異所性再発率を検討した結果、1年再発率は11%、2年再発率は38%、3年再発率は52%だった。

 各因子別に再発率を検討した結果、アルブミン値3.6未満が3.6以上と比べ、血小板値1万未満が1万以上と比べ、食道静脈瘤ありがなしと比べ、有意に再発率が高かった。

 初回治療の治療法別に再発率に差はなく、AFP値あるいはPIVKA-II値別にも再発率に有意な差はなかった。腫瘍径20mm超は20mm以下と比べて再発率が高い傾向にあった。

 BMI(25を閾値)、内臓脂肪面積(100cm2を閾値)、糖尿病の有無別に検討した結果、再発率に有意な差はなかったが、HOMA-IRについて、2.4を閾値として再発率を検討した結果、HOMA-IRが2.4以上の場合は2.4未満の場合と比べて有意に再発率が高かった。3年累積異所性再発率は、低値群が21%だったのに対し、高値群が82%だった。

 異所性再発に寄与する因子について多変量解析を行った結果、腫瘍径20mm超(ハザード比2.212)とともに、HOMA-IR値2.4以上(ハザード比2.775)が有意な因子として見出された。

 HOMA-IR値2.4以上かつ腫瘍径20mm超グループ(Aグループ)とHOMA-IR値2.4未満かつ腫瘍径20mm以下グループ(Bグループ)に分けて累積異所性再発率を検討した結果、Aグループは有意に再発率が高く、Aグループの1年累積再発率、2年累積再発率、3年累積再発率がそれぞれ17%、53%、91%だったのに対し、Bグループは4%、9%、9%だった。

 これらの結果から重松氏は、肝癌再発抑制のため、食生活是正への積極的な介入やインスリン抵抗性を改善する治療が必要な可能性があると締めくくった。