高齢の進行肝細胞癌患者におけるソラフェニブ投与の効果と安全性は、若年の投与例と同様であることが示された。投与開始後の肝予備能悪化のリスクには差がなかった。7月20日から金沢市で開催された第48回日本肝癌研究会で、JA岐阜県厚生連中濃厚生病院内科の尾辻健太郎氏が発表した。

 近年、肝細胞癌患者の高齢化が進んでおり、高齢者に対する積極的な治療介入の機会が増えている。そこで、高齢者に対するソラフェニブ投与の安全性を検討した。

 対象は2009年9月〜2012年6月までに同院でソラフェニブを投与した18例。75歳、80歳を閾値として2グループに分け、投与期間、副作用発生頻度の検討を行った。

 75歳を閾値としたとき、75歳未満10例、75歳以上は8例で、背景肝はほとんどがC型肝炎。初回ソラフェニブ投与量は、75歳未満群のうち8例が400mg、2例が800mg、75歳以上群のうち7例が400mg、1例が800mg。同院の現在の方針は、高齢者には400mgから開始するとしている。Child-Pughスコアは75歳未満群は5点、6点が5人ずつ、75歳以上群は全例が6点だった。総ビリルビンは0.8mg/dL、アルブミンは3.4g/dL。病期は75歳未満群でステージIIが4例、IIIが4例、IVbが2例、75歳以上群はステージIIが3例、III例が3例、IVbが2例だった。AFPは47.8ng/mL、PIVKA-IIは78mAU/mL、遠隔転移ありが18例中4例だった。

 80歳を閾値としたときの患者背景も75歳を閾値としたときとほぼ同じだった。

 血液検査所見について、投与前と投与1カ月後を比較した結果、Child-Pughスコアは75歳未満群、75歳以上群ともに投与前後で有意な変化は見られなかった。一方、総ビリルビンは75歳未満群では投与前後で変化はなかったが、75歳以上群では投与前が0.7mg/dLだったのに対し、投与1カ月後は0.95mg/dLで有意に増加した。80歳を閾値として投与前後の血液学的所見を比較した結果でも、80歳以上群では総ビリルビンが投与後に有意に増加していた。ただし、この総ビリルビンの増加は、投与前と投与1カ月後のChild-Pughスコアの有意な変化をもたらすものではなかった。

 副作用についての検討では、下痢、全身倦怠感、食欲不振、高血圧などについて、75歳で分けても80歳で分けても高齢群と若年群の間で発生率は有意な差がなかった。ただし、今回の検討では、若年群で手足症候群が発生していたのに対し、高齢群では手足症候群が生じた例はなかった。

 ソラフェニブの内服期間、全生存期間についても、75歳、80歳のいずれを閾値としても高齢群と若年群の間で有意な差は見られなかった。

 これらの結果から尾辻氏は、75歳以上の症例において75歳未満と比較して投与開始1カ月後に総ビリルビンの上昇が認められたが、Child-Pughスコアの変化には差がなかったとし、高齢者と若年者の間で投与開始後肝予備能悪化のリスクに差はないとした。

 また同院では、ステージIIなど、局所治療やTACEが適応となるような症例に対しても早期からソラフェニブ投与を選択肢の1つとする方針としている。尾辻氏は、「肝予備能や全身状態を考慮しながら、集学的治療の一環としてソラフェニブ治療を生かすことで予後改善を進めていく」と語った。