進行肝細胞癌に対するソラフェニブ投与において、治療開始早期のAST値上昇は、治療中止や他の治療への切り替えの判断の際に有効な指標である可能性が示された。6月7日から金沢市で開催された第48回日本肝臓学会総会で、聖マリアンナ医科大学消化器・肝臓内科の松永光太郎氏が発表した。

 進行肝細胞癌に対するソラフェニブ投与は、明らかな病勢進行(PD)が確認されるまで可能な限り継続投与することが望ましいとされる。しかし、日常臨床では、効果判定を行う前に有害事象が発現し、治療を継続すべきか苦慮するケースが多い。

 そこで松永氏らは、ソラフェニブ投与に対する早期での予後予測のため、予後に関連する治療前の背景因子や治療開始早期に見られる臨床検査値などの評価を行った。

 対象は同院でソラフェニブ投与を受けた切除不能の進行肝細胞癌のうち、投与開始から4週間以上経過した30例。背景は、年齢68.6±9.5歳、男性96.7%、背景肝はHCVが46.7%、HBVが30%。Child-Pughスコアが5点だったのは66.7%、6点が30.0%、7点が3.3%だった。前治療は、TACEが76.7%、肝動注が6.7%、外科手術が10.0%、前治療なしが6.7%だった。

 登録時の臨床検査値は、血小板(中央値、以下同)は12.2×104/μL、アルブミンは3.6mg/dL、総ビリルビン値は0.75mg/dL、ASTは48 IU/L、ALTは30 IU/L、AFPは292ng/mL、AFP-L3分画は14.35%、PIVKA-IIは210.5ng/mLだった。

 治療については、開始用量が800mg/日だったのが56.7%、400mg/日だったのが53.3%。治療期間(中央値)は109日(95%信頼区間:38-180)。RECIST評価できた19例について、完全奏効(CR)が1例(5.3%)、部分奏効(PR)が4例(21.1%)、病勢安定(SD)が6例(31.6%)で、CR+PRは26.3%、CR+PR+SDは57.9%だった。

 全生存期間中央値は195日(95%信頼区間:86-304)で、薬剤関連有害事象は全グレードが29例(96.7%)、グレード3、4が14例(46.7%)、減量した例は66.7%だった。治療を中断した22例の理由は病勢進行が36.4%、有害事象が59.1%、その他が4.5%だった。

 こうした背景と治療結果が得られた患者を対象に、生存に寄与する登録時背景を検討した結果、大血管浸潤なし、AST 60 IU/L未満(生存期間422日、60 IU/L以上の生存期間129日)、AFP 300ng/mL未満(生存期間310日、300ng/mL以上の生存期間139日)の3因子が見いだされた。

 治療開始後、可能な限り早期の段階で予後を評価できる因子の検討を行った結果、治療開始から3日目までのAST値上昇が30%以上の場合は、30%未満と比べて有意に生存期間が短いことが明らかになった。治療開始から1週間後以降でのAST上昇率は生存期間と相関がなかった。治療前AST値と治療開始後3日目のAST上昇率は相関がなく、独立した予後因子だった。

 治療開始後のAST値上昇は肝実質の血流低下に起因することが考えられる一方で、腫瘍壊死によるASTの逸脱の可能性もあることから、松永氏は今後、多数例を対象に“良い”AST値上昇と“悪い”AST値上昇の判別を含めた検討を進めたいと考えている。

 治療開始から、手足症候群や下痢、高血圧などの有害事象が見られるまでの期間について検討したが、有害事象の出現時期から予後に相関する因子は見出されなかった。

 これらの結果から松永氏らは、有害事象によりソラフェニブ治療継続の判断に迷う症例においては、治療開始早期のAST値上昇が判断材料の1つとなり得る可能性があると指摘。さらに、慢性肝疾患を背景とした肝細胞癌の化学療法においては、肝関連の臨床検査値についての有害事象をCTCAEに則って絶対値で評価するのは適しておらず、治療前値からの変化など、相対評価を検討すべきと強調した。