全身化学療法が有効でなかった乳癌の肝転移に肝動注化学療法が高い効果を持つ可能性が明らかとなった。静岡県立静岡がんセンターで行われた実臨床の結果をレトロスペクティブに解析し示されたもの。今まで乳癌の肝転移には肝動注化学療法は否定的に扱われてきたが、忍容性にも問題はなく、今後前向き試験での効果の検証が期待される。成果は3月21日から24日にオーストリア・ウィーンで開催されている第8回European Breast Cancer Conference(EBCC)で、同センターの久保佳子氏によって発表された。

 研究グループは2002年9月から2011年9月までに乳癌肝転移が見いだされた1723人のうち、アントラサイクリン系抗癌剤、タキサン系抗癌剤が無効となった181人中、詳細な解析が可能であった128人について調べたところ、40人が肝動注化学療法を受けており(HAI群)、88人が肝動注化学療法は受けず、全身化学療法などを受けていた(non-HAI群)。すべての患者が乳癌に対する手術を受けた経験があった。HAI群、non-HAI群の患者背景に有意な差はなかった。肝動注はFEMレジメン(5-FU333?/m2を毎週、エピルビシン30?/m2を4週おきに、マイトマイシンC 2.7?/m2を2週おきに投与)で行われた。

 解析の結果、全生存期間中央値はHAI群が30.5カ月、non-HAI群が12.5カ月で、HAI群が有意(p=0.0203)に優れていた。肝動注化学療法の抗腫瘍効果は完全奏効が1人(2%)、部分奏効が29人(73%)で、奏効率は75%にのぼった。

 一方、肝動注化学療法によるグレード3以上の副作用は、肝機能障害が3人(8%)、骨髄抑制が9人(22%)、胃潰瘍が1人(3%)で、忍容性が認められた。

 久保氏は「肝転移による症状を抑えれば生存期間の延長が期待できる患者に、有効な手段になる可能性がある」と語った。