豪州Melbourne大学のMark A. Jenkins氏らは、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)に特異的な変異を有する人々と、変異を持たない親族の癌発症を前向きに追跡し、変異保有者では、既に知られている大腸癌などに加えて乳癌と膵臓癌のリスクも上昇することを明らかにした。詳細はJournal of Clinical Oncology誌電子版に2012年2月13日に報告された。

 リンチ症候群の患者は、生殖細胞系列のミスマッチ修復(MMR)遺伝子4つ(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2)に変異を有し、癌に対する感受性が増大している状態にあり、大腸癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、胃癌、膀胱癌に罹患しやすいことが知られていた。

 著者らは、これらの変異のいずれかを有する人々と、変異を持たない親族を前向きに追跡し、癌の罹患を調べる研究を世界で初めて行っている。追跡は現在も進行中で、得られる結果は、リンチ症候群患者に行うべきスクリーニングの選択と実施時期の決定などに役立ち、癌リスクの管理を容易にすると期待されている。

 これまで、リンチ症候群患者には、一般集団より若い時期に結腸鏡検査を勧め、より頻繁に受検するようアドバイスしてきたが、その他の癌についても同様にスクリーニングを受ければ、さまざまな癌の早期発見と早期治療が可能になることが、今回の分析により示された。

 著者らは、豪州、ニュージーランド、カナダ、米国で、リンチ症候群に関連する4つのMMR遺伝子の変異のいずれかを有する446人(MLH1変異は161人、MSH2変異は222人、MSH6変異は47人、PMS2変異は16人)と、変異を持たない親族1029人を登録し、5年ごとの受診を依頼した。さまざまな癌の罹患について追跡し、一般集団と比較した標準化罹患比(SIR)を求めた。

 中央値5年の追跡で、一般集団に比べ、変異保有者の大腸癌リスクは20倍(SIRは20.48、95%信頼区間:11.71-33.27、p<0.001)、子宮内膜癌リスクは30倍(SIRは30.62、11.24-66.64、p<0.001)、卵巣癌リスクは19倍(SIRは18.81、3.88-54.95、p<0.001)、腎臓癌リスクは11倍(SIRは11.22、2.31-32.79、p<0.001)、膵臓癌リスクは10倍(SIRは10.68、2.68-47.70、p=0.001)、胃癌リスクは10倍(SIRは9.78、1.18-35.30、p=0.009)、膀胱癌リスクも10倍(SIRは9.51、1.15-34.37、p=0.009)、乳癌リスクは4倍(SIRは3.95、1.59-8.13、p=0.001)であることが明らかになった。また、診断年齢は一般集団より若かった。

 一方、それら変異保有者の親族ではあるが、MMR遺伝子に変異を持たない人々の大腸癌リスクは一般集団と同様(SIRは1.02、95%信頼区間:0.33-2.39、p=0.97)で、その他の癌のリスク上昇も無かったことから、通常以上の頻度でスクリーニングを行う必要は無いと判断された。

 4つのMMR遺伝子のそれぞれがどの癌のリスクを上昇させるのかを調べるためには、さらに大規模な前向き試験を行う必要がある。著者らは、国際ミスマッチ修復コンソーシアムを立ち上げ、アフリカ、アジア、豪州、欧州、北米、南米の51の臨床試験センターのデータをプールしている。これらの施設では1万3000人超の変異保有者を含む、7500世帯を超えるリンチ症候群ファミリーの治療を行っている。