大腸SM癌に対する内視鏡的摘除後の追加治療の適応基準として、SM浸潤度について現行の1000μm以上から2000μm以上に引き上げても、他のリスク因子を有さない症例ではリンパ節転移例は少なく、手術適用例を絞り込むことができる可能性が示された。1月20日に宇都宮市で開催された第76回大腸癌研究会で、自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科の辻仲眞康氏が発表した。

 大腸癌治療ガイドライン2010年度版では、大腸SM癌に対する内視鏡的摘除後の追加治療の適応基準として、過剰治療となる追加切除を減らすため、摘除標本の組織学的検索で、SM浸潤度1000μm以上、脈管侵襲陽性、低分化腺癌、印環細胞癌、粘膜癌、浸潤先端部の簇出グレード2/3、のうち1つでも認められれば追加治療としてリンパ節郭清を伴う腸切除を考慮する、となっている。ただし、辻仲氏は、追加腸切除が減ったという実感が少なく、手術を必要とする症例の絞り込みが十分ではないと考えた。

 そこで、自治医科大学附属病院および自治医科大学附属さいたま医療センターで外科手術または内視鏡的治療が行われた単発大腸SM癌543例を対象に、リスク因子とリンパ節転移の頻度との関連を検討した。

 リスク因子として、先進部の低分化胞巣をPOR(グレード2、3:5個以上の癌細胞から構成され、腺腔形成が乏しい癌胞巣)、粘液癌化をMUC(粘液癌組織が見られるもの)、簇出をBUD(グレード2、3)、リンパ管侵襲をLY(H&E)、静脈侵襲をV(H&E±EVG)、SM垂直浸潤距離(μm)として1000未満、1000以上2000未満、2000以上、とした。

 単変量解析の結果、PORについて、ある場合のリンパ節転移陽性例は15%、ない場合の陽性例は4.6%(p<0.01)、MUCについて、ある場合のリンパ節転移陽性例は13%、ない場合の陽性例は6.3%(p=0.14)、BUDについて、ある場合の陽性例は23%、ない場合の陽性例は4.3%(p<0.01)、LYについて、ある場合の陽性例は17%、ない場合の陽性例は2.4%(p<0.01)、Vについて、ある場合の陽性例は11%、ない場合の陽性例は5.7%(p=0.14)、SM浸潤度について、1000未満の陽性例は2.1%、1000以上2000未満の陽性例は3.0%、2000以上の陽性例は9.6%(p=0.021)だった。

 多変量解析の結果、PORのオッズ比は0.6(p=0.38)、BUDのオッズ比は2.9(p=0.035)、LYのオッズ比は9.2(p<0.01)、SM浸潤度2000μm以上のオッズ比は2.5(p=0.17)だった。

 SM浸潤度2000μm未満かつリンパ節転移陽性例は4例あり、この4例のリスク因子を解析した結果、SM浸潤度2000μm未満単独でのリンパ節転移陽性例は1例のみで、その他3例はLYやBUDを伴っていた。

 浸潤距離(1000μm以上)、POR、BUD、LYが全て判明している317例を対象に解析をした結果、いずれか陽性でリンパ節転移陽性例は20例、リンパ節転移陰性例は226例、いずれも陰性でリンパ節転移陽性例は1例、リンパ節転移陰性例は70例だった。このことから、この4因子での感度は95%、特異度24%、陽性的中率8.2%、陰性的中率99%となった。

 浸潤距離(2000μm以上)、POR、BUD、LYが全て判明している317例を対象に解析をした結果、いずれか陽性でリンパ節転移陽性例は20例、リンパ節転移陰性例は186例、いずれも陰性でリンパ節転移陽性例は1例、リンパ節転移陰性例は110例だった。このことから、この4因子での感度は95%、特異度37%、陽性的中率9.7%、陰性的中率99%となった。

 この結果から辻仲氏は「内視鏡的摘除術後の追加治療を考慮すべき因子としてのSM浸潤度は1000μmから2000μmとすることを提案したい。これにより手術適応例をより絞り込むことができ、リンパ節転移例を内視鏡治療のみで経過観察する危険性を低く保つことができる」と締めくくった。