一次治療でオキサリプラチンをベースにした化学療法を受けた大腸癌患者では、オキサリプラチンの効果を規定する因子であるERCC1遺伝子と5-FUの分解酵素であるDPD(ジヒドロピリミジン脱水素酵素)遺伝子の発現が高くなっていることを、大腸癌肝転移切除標本を用いて確認した。セカンドライン治療にはDPD阻害剤を含む製剤(DIF製剤)であるS-1を用いたIRIS療法がFOLFIRI療法よりも有効であることを裏付けた結果となった。成果は1月19日から21日に米サンフランシスコで開催された2012 Gastrointestinal Cancer Symposium(ASCO GI)で、熊本大学大学院消化器外科学教授の馬場秀夫氏によって発表された。

 切除不能大腸癌に対するイリノテカンによる一次治療を受けていない症例の二次治療として、経口剤を用いたIRIS療法とFOLFIRI療法を比較する第形蟷邯海任△FIRIS試験が行われた。この試験の結果、IRIS療法がFOLFIRI療法に非劣性であることが証明された。また、サブセット解析の結果、オキサリプラチンによる前治療歴がある集団では、IRIS療法の方が有意に良い効果を示すことが明らかになった。

 このことを受けて、馬場氏らはオキサリプラチンの感受性が低い細胞はDPD発現が高く、DPD阻害剤を含む製剤(DIF 製剤)であるS-1が効くのではないかという仮説を立て、NCI 抗癌剤スクリーニングデータベースを用いて、オキサリプラチン感受性データ(全60株)から、オキサリプラチン高感受性の10株と低感受性の10株を抽出し、オキサリプラチンの効果を規定する因子であるERCC1 発現とDPD 発現の関連性を検討した結果、両者には正の相関が認められた。

 さらに、オキサリプラチン高感受性群では、ERCC1のmRNAの発現が低く、逆に低感受性群では、ERCC1のmRNAの発現が有意に高いことが示された。よって、一次治療でオキサリプラチンベースの治療に抵抗性を示した細胞は、ERCC1のmRNAの発現レベルが高い、即ち、DPD発現が高い細胞である可能性が示されていた。

 今回、実際の臨床検体での検証を目的とし、オキサリプラチンを含まない一次治療を受け、肝転移を切除した患者21人の腫瘍と、オキサリプラチンを含む一次治療を受け、肝転移を切除した患者24人の腫瘍でERCC1、DPD、TOPO-1遺伝子のmRNAの発現レベルを検討した。その結果、TOPO-1遺伝子については差がなかったが、ERCC1遺伝子の発現とDPD遺伝子の発現は、一次治療でオキサリプラチンを使用した患者で有意に高いことが明らかとなり、細胞株での結果が実際の臨床検体でも同様であることが示された。FOLFOX療法を受けた患者のERCC1 mRNAとDPD mRNAの発現はオキサリプラチンを受けなかった患者に比べて、1.8倍と6.5倍になった。さらに免疫組織染色を行った結果、ERCC1たんぱく質とDPDたんぱく質は、FOLFOX療法を受けた患者でオキサリプラチンを受けなかった患者に比べて有意に高発現していた