D2郭清を行った局所進行胃癌の術後補助療法としてS-1を投与する場合、腫瘍内のチミジル酸シンターゼ(TS)とジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)遺伝子の発現が高い患者では、低い患者に比べて、全生存期間が有意に長いことが明らかとなった。S-1の胃癌術後補助療法としての有効性を示した無作為化フェーズ3試験ACTS-GC試験に参加した患者のバイオマーカー解析試験の結果、明らかとなったもの。両遺伝子の発現状態がS-1の術後補助療法の効果予測因子となる可能性が示されたことになる。成果は1月19日から21日に米サンフランシスコで開催されている2012 Gastrointestinal Cancer Symposium(ASCO GI)で、兵庫医科大学主任教授の笹子三津留氏によって発表された。

 バイオマーカー試験は、ACTS-GC試験に参加した患者1059人のうちホルマリン固定パラフィン包埋標本が得られた829検体を対象に行われた。このうち、S-1投与群(415人)の5年全生存率は73.8%、手術のみ群(414人)は61.9%で、両群の患者背景に差はなかった。この対象より得られた標本からRNAを抽出し、逆転写酵素によりcDNAを得て、Taqman-PCR法で遺伝子発現量を計測したところ、TSは808例、DPDは807例で測定可能であった。

 TSは66.7パーセンタイルをカットオフ値と設定し、OSを解析すると、手術のみ群(406人)はTS高値群(141人)とTS低値群(285人)で、ハザード比1.088(95%信頼区間:0.777-1.552)、p=0.623で差がなかった。これに対してS-1群(402人)では、TS高値群(127人)とTS低値群(275人)で、ハザード比0.521(95%信頼区間:0.319-0.850)、p=0.008で、TS高値群が有意に良かった。

 またTS低値群(540人)では、S-1投与群(275人)と手術のみ群(n=265)でハザード比0.757(95%信頼区間:0.563-1.018)、p=0.065で有意差はなかったが、TS高値群(268人)では、S-1投与群(127人)と手術のみ群(n=141)でハザード比0.370(95%信頼区間:0.221-0.619)、p<0.001と、同様にTSの発現が高い患者でS-1の効果が有意に高く、S-1投与群とTS発現の間に有意な交互作用が認められた。

 さらにDPDについて33.3パーセンタイルをカットオフ値と設定し、遺伝子発現とOSの関係を同様に調べたところ、手術のみ群(406人)はDPD高値群(273人)、DPD低値群(133人)で、ハザード比1.013(95%信頼区間:0.718-1.429)、p=0.942で差がなかったのに対し、S-1群(401人)は、DPD高値群(265人)、DPD低値群(136人)で、ハザード比0.616(95%信頼区間:0.416-0.914)、p=0.015で、S-1群でDPD高値群が有意に良かった。

 DPD低値群(269人)では、S-1投与群(136人)と手術のみ群(n=133)でハザード比0.848(95%信頼区間:0.563-1.276)、p=0.428で有意差はなかったが、DPD高値群(273人)では、S-1投与群(265人)と手術のみ群(n=273)でハザード比0.520(95%信頼区間:0.376-0.720)、p<0.001で、同様にDPDの発現が高い患者でS-1の効果が有意に高く、S-1投与群とDPD発現の間に有意な交互作用が認められた。

 笹子氏は「DPDが高い症例にS-1の効果がより高かったのは、S-1がDPD阻害剤を含有することを考えるとリーズナブルな結果であろう。TSまたはDPDが低い症例に対しては、S-1と他剤の併用などを考慮すべきかもしれない」と語った。