スイスHoffmann-La Roche社は、2011年10月18日、皮下注射処方の「ハーセプチン」(トラスツズマブ)と、現在標準的に使用されている静注処方の製品を比較したフェーズ3 HannaH試験で好結果が得られたと発表した。

 このフェーズ3試験は、HER2陽性早期乳癌患者596人を登録し、オープンラベルで行われた。目的はこれら2通りの処方のトラスツズマブの薬物動態、有効性、安全性を比較することにあった。

 血中トラスツズマブ濃度と有効性の2つに設定された主要エンドポイントは、いずれも達成された。安全性に関する新たな問題は見つからず、有害事象は静脈内投与した場合と同様だった。

 試験結果は近々学会発表される見込みだ。同社は得られたデータに基づいて、欧州での承認申請提出を計画している。

 トラスツズマブの静注に要する時間は約30分だが、皮下注射処方を用いれば5分しかかからないため、忙しい患者には好ましい選択肢になると予想される。さらに、調剤が不要な、すぐに使える処方になっている点で、医療機関にとっても好都合といえる。

 皮下注射処方を可能にしたのは、米Halozyme Therapeutics社専有の組み換えヒトPH20ヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を用いた薬剤送達技術「Enhanze」だ。rHuPH20は、皮下のヒアルロン酸を分解することにより、同時に注射された薬剤や液体の吸収と分散を容易にする。皮下の組織を一過性に変化させて200ナノメートル程度の大きな分子の細胞外マトリクス通過を可能にするが、その作用は投与後24時間で消失する。rHuPH20は既に、注入薬剤の分散と吸収を向上させるアジュバントとしてFDAの認可を受けている。

 中外製薬によると、HannaH試験には日本は参加しておらず、皮下注射製剤の承認を日本で獲得するためには新たに臨床試験を行わなければならないなど、ハードルは高いが検討中であるという。