スイスRoche社は2011年8月17日、米食品医薬品局(FDA)がvemurafenib(商品名Zelboraf)を、BRAFにV600E変異が認められる切除不能または転移性のメラノーマの治療に用いることを許可したと発表した。この治療によって利益が得られる患者を同定するために同社が開発した、BRAFのV600E変異の有無を調べるPCRベースのcobas4800 BRAF V600変異検査も、同日FDAの承認を得た。

 vemurafenibは2週間以内に発売される見込みだ。米国ではvemurafenibは、BRAF V600E変異陽性の転移性メラノーマ患者に生存利益をもたらすことが示されている唯一の個別化治療薬となる。メラノーマ患者の約半数がこの薬剤の利益を得られると予想されている。

 BRAFたんぱく質は、正常な細胞の増殖と生存に関与する「RAS−RAF伝達系」の重要な構成要素で、BRAFの変異により伝達系が常時活性化された状態になると、細胞の増殖と生存は制御不能になる。vemurafenibは、腫瘍の成長を促進する変異型BRAFを選択的に阻害する経口低分子薬だ。

 FDAによる承認は、2件の臨床試験BRIM3とBRIM2のデータに基づいて判断された。いずれも対象となったのはcobas BRAF検査でBRAF V600E変異陽性と判定された切除不能または転移性メラノーマの患者だ。

 BRIM3は国際的な無作為化フェーズIII試験で、オープンラベルで行われた。治療歴の無い675人の患者を登録し、vemurafenibと標準治療であるダカルバジンを比較した試験のエンドポイントは、全生存期間と無増悪生存期間に設定されていた。得られたデータを分析したところ、ダカルバジンと比較したvemurafenibの死亡のハザード比は0.44(p<0.0001)で、死亡または増悪のハザード比は0.26(p<0.0001)となった。無増悪生存期間の中央値は、vemurafenib群が5.3カ月、ダカルバジン群が1.6カ月だった。

 BRIM2は国際的なシングルアームのフェーズII試験で、やはりオープンラベルで行われた。132人の治療歴のある患者を登録し、全奏効率を評価した。vemurafenibの投与は52%の患者に腫瘍縮小をもたらしたという。

 いずれの試験でも安全性のプロファイルはそれ以前の臨床試験で見られたと同様だった。vemurafenib群に最も多く見られたグレード3以上の有害事象は皮膚の扁平上皮癌(cSCC)、発疹、肝機能低下、関節痛などだった。cSCCが見つかったケースについてはこれを切除して治療を継続した。

 vemurafenibは、2011年3月に第一三共グループの傘下に入ったPlexxikon社とRoche社が2006年に結んだライセンス・協力契約に基づいて共同開発されている。Roche社は、欧州とスイス、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、インド、メキシコ、カナダでvemurafenibの承認申請を提出済みで、それ以外の国でも申請を行う計画だ。一方で、Expanded Access Program(EAP)を通じて世界中のBRAF V600変異陽性メラノーマ患者にvemurafenibを提供している。