術前測定のAFP、AFP-L3分画、PIVKA-IIの3因子がいずれも高値の肝細胞癌は、腫瘍径が大きく、組織学的に浸潤傾向を示し、予後不良であることが明らかとなった。7月22日から静岡市で開催された第47回日本肝癌研究会で、和歌山県立医科大学第二外科の上野昌樹氏が発表した。

 国内では、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしてαフェトプロテインAFP)、AFP-L3分画、des-γ-carboxy prothorombinI(PIVKA-II)が利用されている。これまで、それぞれのマーカーと肝細胞癌の生物学的悪性度との関連は報告されているが、3つのマーカーとの発現パターンとの関連性を検討した例は少ない。

 今回、上野氏らは、2009年5月までに、術前にAFP、AFP-L3分画、PIVKA-IIを同時期に測定した初回肝切除185例を対象に、術前測定可能因子と3マーカーとの関連を解析した。

 AFPはカットオフ値20ng/mL、AFP-L3分画は10%、PIVKA-IIは40mAU/mLとし、各マーカーのカットオフ値を境に陽性、陰性を判定、3つのマーカーのパターンと各因子の関連を検討した。

 患者背景と3マーカーとの関係を見ると、AFPはAST、プロトロンビン時間、血小板など肝機能に関連する因子に差が出ることが多く、AFP-L3分画とPIVKA-IIについては、腫瘍個数や腫瘍径、画像上の脈管浸潤などで差が出る傾向にあった。

 実際、3マーカーすべて陰性例と比べて陽性例は、腫瘍径5cm以上、脈管浸潤、系統的切除の割合が有意に高いことが示された。無再発生存率や疾患特異的生存率についても、3マーカーすべて陰性例や1マーカー陽性例、2マーカー陽性例と比べて、3マーカー陽性例は悪いことが示された。

 多変量解析を行った結果、無再発生存に対して、肝機能分類Child-pugh B、腫瘍個数とともに3マーカーすべて陽性が独立したリスク因子であることが明らかとなった。

 疾患特異的生存率に対しても、腫瘍個数とともに3マーカーすべて陽性が独立したリスク因子であることが見いだされた。

 病理組織学的因子との関連を解析した結果、脈管浸潤とEdmondson分類グレードIII、IVについて、3マーカーすべて陰性例、1マーカー陽性例、2マーカー陽性例、3マーカーすべて陽性例の順に頻度が高くっており、3マーカーすべて陽性例は有意に頻度が高かった。

 上野氏は、「3マーカーがいずれも陽性の場合、組織学的に脈管浸潤が多く認められ、Edmondson分類グレードIII、IVの頻度が高い。こうした場合は外科的治療の必要性が高いといえるだろう」と語った。

 なお、この検討は和歌山県立医科大学第二外科の桐山茂久氏、上野氏らが行ったもので、Annals of Surgeryのオンライン版に最近掲載された。