多発性骨髄腫の治療薬であるレナリドミドやサリドマイドなどの免疫調整薬の使用で、静脈血栓塞栓症(VTE) のリスクが高くなるといわれている。レナリドミド治療の患者に対し、低分子へパリン(LMWH)あるいはアスピリンを予防的に投与した試験(RV-MM-PI-209)で、VTE予防には低分子へパリンの効果が高いことが示された。フランス・パリで開催された国際骨髄腫ワークショップ(IMW、5月3日〜6日)で、イタリアUniversity of TorinoのF. Cavallo氏らが発表した。

 多発性骨髄腫でレナリドミド治療におけるVTEの発生率は、単独投与では0〜3%、デキサメタゾンとの併用では約11〜26%だが、アスピリンの予防的投与によって、メルファランとの併用でのVTE発生率は約6%、デキサメタゾン併用では約6%に減少することが報告されている。

 また米国臨床腫瘍学会(ASCO)ガイドラインでは、サリドマイドやレナリドミド治療を化学療法もしくはデキサメタゾンと併用する多発性骨髄腫患者には、低分子へパリンもしくはワーファリンの予防的投与が推奨されている。

 研究グループは、62施設の65歳以下の多発性骨髄腫患者402人を対象に、導入治療として、レナリドミド25mg/日を第1〜21日に、低用量デキサメタゾン40mg/日を第1日、8日、15日、22日に投与した(Rd療法)。その後、地固め療法として、MPR療法(メルファラン、プレドニゾン、レナリドミド)を行う群と、メルファランとタンデム移植を行う群の2群に無作為化割り付けした。

 導入療法時ならびにMPR療法群に対して、VTE予防薬として低分子へパリンであるエノキサパリン40mg/日もしくはアスピリン100mg/日を投与した。主要評価項目は深部静脈血栓症(DVT) 、肺血栓塞栓症(PE)、動脈血栓症、急性心血管イベントの発症、急死と設定された。

 無作為化できた患者342人のうち、低分子へパリン群は166人、アスピリン群は176人となった。年齢中央値は低分子へパリン群は57歳、アスピリン群は58歳で、60歳以上がそれぞれ36%、40%を占めた。また遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤(rHuEPO)を使用していた患者は両群とも17%だった。

 その結果、グレード3/4の血栓塞栓症の発症は、アスピリン群が4人(2.27%)、低分子へパリン群が2人(1.2%)だった。このうちDVTはアスピリン群が2人、低分子へパリン群が2人で、PEはアスピリン群で3人であり、Cavallo氏は「予防薬の投与下でVTE発症率は低いことが確認された」とした。また血栓塞栓症が見られた6人はすべて導入療法時に発症していた。

 この結果から、Cavallo氏は、「レナリドミド治療を受ける多発性骨髄腫患者では、低分子へパリンが標準的な予防薬と考えられる」と述べた。またVTEリスクが低い患者や長期の予防的投与では、アスピリンの使用も可能であるとした。

 なお国内で、エノキサパリンナトリウムは、下肢整形外科手術施行(股関節全置換術、膝関節全置換術、股関節骨折手術)患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制と、静脈血栓塞栓症の発症リスクの高い腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制を適応としている。