男性でも高頻度にHPV感染が生じており、性器だけでなく尿路にも感染があること、またHPV感染は若年発症かつ低グレードの膀胱腫瘍の原因の1つである可能性が示唆された。4月21日から名古屋市で開催された第99回日本泌尿器科学会総会で、金沢大学泌尿器科の重原一慶氏が発表した。

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌の原因であることが示され、子宮頸癌は女性では2番目に多い悪性腫瘍となっている。またHPV感染は最も多い性感染症の1つであり、男性側のHPV感染率と子宮頸癌以外の癌との関連性についての情報が求められていた。

 これまでの海外の報告では、健常男性におけるHPV検出率は、陰茎や陰嚢、尿道などの部位で8.7%から44.6%まで多岐にわたり、年齢、地域、調査する部位によって大きく異なっている。

 一般的には、男性におけるHPV感染部位は亀頭、陰茎、陰嚢といった外性器が主であるとされていたが、同グループが日本における健常ボランティア304例と尿道炎患者55例の尿におけるHPV検出率を検討した結果では、健常者では1.9%であったのに対し、尿道炎患者では24%となっており、少数例の検討ではあるが、男性尿道炎患者の尿路にもHPV感染は生じていると考えられた。

 そこで日本人男性の尿道炎患者142例を対象に陰茎、尿道、尿検体を解析した結果、総HPV検出率は48%で、部位別のHPV検出率は陰茎31%、尿道20%、尿24%であった(Shigehara et al. Int J Urol 2010;17:563-9)。子宮頸癌の原因となる高リスク型のHPV感染率についても32%と高率だった。

 また、陰茎擦過検体や尿道擦過検体、尿検体の細胞診所見を解析した結果、HPVが検出された60%から80%の検体において、コイロサイトーシスや錯角化、軽度異型細胞などが認められ、男性においても、女性の子宮頸部HPV感染と同様な細胞変化が生じていることがわかった。また、In situ hybridization解析を用いて、尿路の扁平上皮および移行上皮細胞にHPV-DNAシグナルを観察し、HPVが尿路上皮に感染していることを確認した。

 これらのことから、HPVが陰茎癌や尿路上皮癌にも関与している可能性が示唆されたため、HPVが持続感染した場合に女性と同様に腫瘍性変化を起こしうるかを解析した。

 最もHPVと関係すると考えられていた陰茎癌については、海外での検討では、陰茎癌患者のHPV検出率は約40%と報告されているが、金沢大学の検討でも陰茎癌患者17例中8例(47%)にHPV-DNAが検出された。

 膀胱癌については、海外の報告では、HPVの癌化への関与を肯定する報告と関連性を否定する報告がほぼ半数ずつとなっている。重原氏らは、経尿道的手術で摘出した初発膀胱癌117例の凍結腫瘍切片からDNAを抽出し、HPV−DNAをPCR法を用いて解析した結果、HPV−DNA陽性例は15%で、さらに型判定ができなかった1例を除き、全ての症例が腫瘍発生リスクの高いHPV genotypeであるHPV16やHPV18などだった。

 HPV陽性例と陰性例の患者背景を比較した結果、年齢が陰性例70.3歳に対して陽性例は60.2歳と有意に若く、また、低グレード(G1)の腫瘍からのHPV検出が高かった(Shigehara et al. Cancer 2010 Nov 29[Epub])。

 次に、HPVが癌化に関連しているかどうかを評価するため、HPVの発癌遺伝子について解析を行った。HPVの発癌蛋白の1つであるE7蛋白が発現しているかどうかを評価できるバイオマーカーとしてp16、mcm7という蛋白が知られているが、この2つの発現を免疫組織学的に調査した結果、HPV陽性検体では、HPV陰性検体、正常膀胱粘膜に比べて、p16、mcm7蛋白は有意に高い発現であったことが確認された。

 前立腺についても同様に解析した結果、現在のところHPVは前立腺に感染しうるが、前立腺癌発生に関与している可能性を支持する結果は得られていない。

 こうした結果から重原氏は、HPV感染は、若年発症かつ低グレードの膀胱腫瘍の原因の1つである可能性が示唆されたこと、HPVは前立腺に感染しうるが、前立腺癌発生に関与している可能性を支持する結果ではなかったとまとめた。

 そして最後に重原氏は、「女性ではワクチン接種が行われているが、男性でのHPV感染関連腫瘍についてもエビデンスが確立されれば、ワクチンによる予防が可能で、医療経済効果も期待できる。しかし、現状ではHPV感染と泌尿器科腫瘍との関連についてエビデンスが乏しいため、泌尿器科医がリーダーシップをとって調査する必要がある」と指摘した。