局所もしくは局所進行性前立腺癌に対するホルモン療法として、LH-RHアゴニスト単剤治療で開始し、PSAの上昇に応じて抗アンドロゲン療法を追加するDelayed-CAB療法が有効であることが、三重J-Cap研究会が実施した前向き臨床研究の結果から明らかとなった。三重J-Cap研究会を代表して、三重大学腎泌尿器外科の曽我倫久人氏が、4月21日から名古屋市で開催された第99回日本泌尿器科学会総会で発表した。

 現在のところ、進行性前立腺癌に対するホルモン治療は、CAB療法が主流となっている。しかし、限局性もしくは局所進行性前立腺癌(cT1c─T3aN0M0)に対するホルモン治療については、まだ明確な指針がない。

 同グループは、LH-RHアゴニストのみで維持できる可能性や抗アンドロゲン薬内服による副作用を回避するため、LH-RHアゴニストと抗アンドロゲン薬を同時に開始するのではなく、LH-RHアゴニスト投与後、PSAが測定感度以下に低下しないもしくはPSAが再上昇することを確認したら抗アンドロゲン薬を追加投与するDelayed-CAB療法の有効性を検討してきた。

 今回、cT1c─T3aN0M0の前立腺癌に対するDelayed-CAB療法の長期治療効果について評価した結果を報告した。

 対象は2001年1月から2004年12月までに三重J-Cap研究会に登録された640例の前立腺癌患者のうち、Delayed-CAB療法が施行されたcT1c─T3aN0M0の患者92例。

 LH-RHアゴニストとしてリュープロレリンあるいはゴセレリンを、抗アンドロゲン薬としてビカルタミド80mg/日を使用した。

 Delayed-CAB療法は、LH-RHアゴニスト単剤で治療を開始し、PSA nadirが0.2ng/mLより高値である場合、もしくはPSA nadirが0.2ng/dL以下であるが経過観察中にPSAが3ポイント連続して0.2ng/dLより高値であることが確認されれば、抗アンドロゲン薬を追加する方法とした。

 観察期間中央値は52.8カ月で、導入時平均年齢は76.4歳。開始時のPSAは14ng/mL(3.6-492)、cTステージはT1c/T2a/T2b/T3aがそれぞれ27/39/20/6例で、グリソンスコアは6未満/7/8〜10がそれぞれ45/26/21例だった。

 追跡の結果、LH-RHアゴニスト単剤治療でPSA nadirが0.2mg/mLより高値である症例は38例、PSA nadirが0.2mg/mL以下の症例は54例だった。5年PSA非再発率は62.4%、8年PSA非再発率は42.3%だった。PSA再発を確認した31症例に抗アンドロゲン薬が追加投与され、追加後の8年PSA非再発率は60.9%だった。

 Delayed-CAB療法全工程での5年PSA非再発率は88.3%、9年PSA非再発率は74.8%だった。

 経過観察中の癌死は1例、他因死は9例で、5年癌特異的生存率は98.0%、全生存率は87.5%、9年癌特異的生存率は98.0%、全生存率は83.5%だった。

 Delayed-CAB療法全行程での多変量解析によるPSA再発に関する検討において、LH-RH agonist monotherapyでの維持期間<14カ月(p<0.01、HR 16.8)のみが有意な危険因子であった。以上の結果より、LH-RH agonist monotherapy での維持期間が、Delayed-CAB療法における維持期間に有意に関与していることが明らかになった。

 また、LH-RHアゴニスト単剤治療中におけるPSA再発に関する多変量解析の結果から、グリソンスコア8以上(ハザード比3.02)、PS nadir 1.4ng/mL以上(ハザード比8.75)、治療開始後初期6カ月のPSA半減期が1.2カ月以上(ハザード比6.3)が有意な危険因子として見出された。

 これらの危険因子を1つ以上有する高リスク群(51例)と危険因子を有さない低リスク群(41例)に分けて検討した結果、低リスク群のPSA非再発率は1年100%、3年100%、5年95.0%、9年95.0%であったのに対し、高リスク群のPSA非再発率は1年100%、3年86.1%、5年82.6%、9年58.6%と有意に低いことが示された。

 これらの結果から曽我氏は、「局所もしくは局所進行性前立腺癌においてDelayed-CAB療法は長期に維持できる症例が多く存在し、Delayed-CAB療法中にPSA再発の危険因子をモニタリングすることで適切なタイミングで抗アンドロゲン薬追加投与を行うことができる」と締めくくった。