スイスHoffmann-La Roche社は、2011年4月7日、HER2陽性の転移性乳癌患者を対象にしたフェーズ2試験(TDM4450g)で、トラスツズマブ-DM1(T-DM1、trastuzumab emtansine) による初回治療が、トラスツズマブとドセタキセルの併用療法よりも、無増悪生存期間(PFS)を延長させたことが明らかになったと発表した。

 T-DM1は、抗HER2モノクローナル抗体製剤トラスツズマブに、微小管重合阻害剤誘導体であるDM1を結合させた抗体-薬物複合体(ADC)。トラスツズマブとDM1は安定したリンカーで連結されているため、腫瘍細胞に入るまで活性化せず、そのため周囲の正常細胞への化学療法の影響が少ないと考えられている。トラスツズマブがHER-2陽性の腫瘍細胞に結合すると、トラスツズマブによる効果に加えて、腫瘍細胞に取り込まれたDM1が腫瘍細胞を破壊する。

 フェーズ2試験は、多施設共同無作為化オープンラベル試験として行われた。未治療の転移性乳癌患者137人を対象に、T-DM1のみを投与する群とトラスツズマブとドセタキセルを併用投与する群が比較された。主要評価項目はPFSと安全性で、副次評価項目は奏効率、奏効期間、臨床利益率であった。

 試験の結果、T-DM1群のほうがPFSが有意に長く、化学療法による副作用も少なかった。詳細な結果は今後開催される学術会議で報告される。

 中間解析では、4カ月以上の追跡期間で、良好な抗腫瘍効果と優れた安全性が認められており、昨年の第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)でその結果が報告されていた。