九州大学病院肝膵胆道内科診療准教授の伊藤鉄英氏らは、米国のテキサス州立大学M.D.Anderson Cancer Center教授のJames C.Yao氏らと共同で、現在のところ標準的治療がない進行性悪性膵内分泌腫瘍に対するエベロリムスの有効性を示したフェーズ3試験RADIANT-3の結果を、The New England Journal of Medicine誌電子版2月10日号で報告した。


 悪性膵内分泌腫瘍は、消化器癌の中で最も予後が悪い癌に属し、膵癌全体の1〜2%を占める。これまで、進行性で手術ができない患者に対する有効な標準的治療がなかった。エベロリムスは経口のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的蛋白)阻害薬であり、細胞増殖シグナルを阻害することにより、腫瘍細胞の増殖を抑制する。さらに、血管新生も阻害し腫瘍増殖を抑制する。

 エベロリムスは、ノバルティス ファーマが開発し、進行性悪性膵内分泌腫瘍を対象に国際共同治験を行った。日本からは九州大学病院、国立がん研究センター中央病院・東病院の3施設が参加していた。エベロリムスは進行性悪性膵内分泌腫瘍患者の無増悪生存期間(PFS)を2.4倍に延長しており、現在ノバルティスが厚生労働省に承認を申請している。早ければ2011年中にも日本で使用可能となると期待されている。

 日本膵臓学会理事長である田中雅夫氏(九州大学臨床・腫瘍外科教授)は「治験結果は好成績であり、本邦では進行性悪性膵内分泌腫瘍に対する初めての治療薬となり得る可能性を秘めている。この薬を少しでも早く臨床の場で使用できるようにすることで、今まで治療薬が存在せず期待の持てなかった多くの患者さんおよびその家族に大きな恩恵をもたらすことができるものと考えられる」と話している。