米国立癌研究所(NCI )のSteven A. Rosenberg氏らは、患者自身のT細胞に癌抗原であるNY-ESO-1を認識するT細胞受容体(TCR)を発現させて患者に戻す養子免疫療法の有効性と安全性を、治療抵抗性の転移性メラノーマ患者と転移性骨膜肉腫患者を対象に評価し、有望な結果を得た。詳細は、Journal of Clinical Oncology誌電子版に2011年1月31日に報告された。

 今回標的として選ばれた癌抗原NY-ESO-1は、癌・精巣抗原のひとつで、正常組織で発現しているのは精巣のみだが、上皮性の癌(メラノーマ、乳癌、腎臓癌、食道癌など)では4分の1から3分の1が、滑膜肉腫の場合には約80%がこのたんぱく質を発現している。精巣にはHLAの発現が無いため、この抗原を標的とする免疫治療を全身性に適用しても攻撃を免れる。従って、NY-ESO-1は癌治療の標的として有望と考えられている。

 試験の対象になったのは、難治性でNY-ESO-1陽性の転移性滑膜肉腫患者6人と転移性メラノーマ患者11人。

 研究者たちは、患者から採取したT細胞に遺伝子操作を加えてNY-ESO-1を認識するT細胞受容体を発現させ、増殖させた。その間に患者には短期間の化学療法を行い、終了後に、十分な数になった組み換えT細胞を72万IU/kgのインターロイキン-2とともに患者に注入した。

 RECIST基準を用いて客観的な臨床反応を評価したところ、奏効と判定されたのは滑膜肉腫患者4人(奏効率は67%)とメラノーマ患者5人(奏効率は45%)。メラノーマ患者のうちの2人は完全奏効の状態が1年を超えて継続した。また、滑膜肉腫患者1人については、部分奏効の状態が18カ月間持続した。毒性はわずかだった。

 TCR遺伝子を導入したT細胞を用いてメラノーマ以外の癌の治療に成功したのはこれが初めてで、組み換えT細胞を用いた養子免疫療法は固形癌の治療にも有用であることが示唆された。