米食品医薬品局(FDA)は、2011年1月26日、インプラントとして生理食塩水バッグまたはシリコン・ゲル・バッグを用いた、豊胸術もしくは乳房再建手術を受けた患者に、非常にまれではあるが未分化大細胞型リンパ腫ALCL)が発生する可能性があると発表した。

 FDAは、1997年1月から2010年5月までに発表された論文のレビューを行い、各国の研究者、インプラント製造会社、国際的な医薬品・医療機器監督機関などから提供された情報を分析して、ALCLリスク上昇の可能性を見いだした。レビューの結果は同日、FDAのウェブサイトで公開された。

 論文のレビューで、インプラント埋め込み後に乳房にALCLが見付かった女性が34例同定された。年齢の中央値は51歳で、植え込みから診断までの中央値は8年(レンジは1-23年)だった。植え込み理由は、11例が乳房再建、19例が豊胸で、4例については報告がなかった。インプラントのタイプは、24例がシリコン、7例が生理食塩水、4例については報告なし。治療について報告していたのは20例で、転帰は全身性のALCLより良好と考えられた。現時点では、インプラントの種類や植え込みの目的がALCLリスクの高低に影響するかどうかは明らかではない。

 ALCL症例の多くが、植え込み時の創傷が完全に治癒した後にインプラント関連の痛みやしこり、腫れなどの症状を訴えて受診し、ALCLと診断されていた。患者が経験した症状は、インプラント周囲の漿液貯留(漿液腫)、インプラントを囲むように形成されたコラーゲン繊維による被膜、被膜が厚く硬くなり縮んだ状態になった被膜拘縮などに起因しており、漿液や瘢痕組織を採取して検査した結果、ALCLと判明した。

 ALCL細胞は、被膜とインプラントの間に貯留した漿液の中に存在しており、診断のきっかけとして最も多かったのは、漿液腫が持続したために行われたインプラント入れ替え手術だった。

 米国で1年間に約50万人に1人の割合でALCLと診断される。ALCLは非ホジキンリンパ腫の1種で、リンパ節や皮膚などを含む様々な場所に発生するが、乳房に局在するケースは非常にまれだ。

 FDAが現在把握している、乳房インプラント植え込み後にALCLと診断された症例は全世界に約60例だが、確認はできていない。インプラント植え込みを受けた女性は、全世界に500万人から1000万人いると推定されている。

 得られた知見に基づいてFDAは下記のようなアクションを開始した。

*米形成外科学会やその他の学会に所属する専門医とともに、乳房インプラントの埋め込みを受け、ALCLと診断された患者のレジストリを作成。

*インプラント製造会社に協力を依頼し、植え込みを受ける女性にALCLリスクについての説明が確実に行われるよう、患者と医療従事者向けの表示を改訂。

*医療従事者に、乳房インプラントの植え込みを受けた後にALCLと診断されたあらゆる症例の報告を要請。また、術後時間を経てからインプラント周囲に漿液腫が認められた場合には、漿液を採取して専門的な検査機関に送付し、ALCLでないかどうか確認するよう要求。

 さらにFDAは以下を推奨した。

*患者がALCLと診断された場合には、個々にケアチームが治療計画を作成する必要がある(まれな病気であるため、合意が得られた治療レジメンは存在しない)。

*インプラント植え込みを受けた患者は、異常がない限り特別に検査を受ける必要はなく、予防的なインプラント抜去は不要で、これまで通りの周期でフォローアップ受診を続ければよい。ただし、インプラント周囲に変化が認められた場合にはすみやかに受診する。

*これからインプラントの植え込みを受けようと考えている女性には、リスクと利益について専門医と十分に話し合う機会を与える。