治癒は望めない進行がんと診断された患者の日々を、より充実した、尊厳あるものにするために必要なのは、診断直後から医師が予想される経過や治療の選択肢について患者に説明し、患者は自分が医療に対して望むものを明らかにして、話し合いの中で最適な治療計画を作製することだ。米臨床腫瘍学会(ASCO)は2011年1月25日、新たなポリシー・ステートメントをJournal of Clinical Oncology誌に発表し、これを実現するための具体的な方法を提案している。並行してASCOは、患者に対するガイドも公開した。

 がん専門医にとって第一の目標は生存期間延長だが、終末期の患者の日々を快適で尊厳あるものにすることも極めて重要な責務のひとつだ。患者は、担当医から十分な説明を受けた上で、どのようなケアを望むのかを決定する権利を有する。

 ASCOのQuality Oncology Practice Initiative(QOPI)の調査では、米国においても、死亡する前にホスピスに入院する患者は半数に満たない(45%)ことが明らかになった。それらの患者の3分の1は最後の1週間のみをホスピスで過ごしていた。また、終末期の患者の5人に1人が痛みの適切な管理を受けておらず、3人に2人は呼吸困難に対する適切な処置を受けていなかった。

 一方、緩和治療は、患者の生活の質を高めるだけでなく生存期間延長ももたらすことを示した研究結果がある。ASCO Cancer Foundationが後援した進行肺がん患者を対象とした研究は、診断直後から化学療法とともに緩和療法を併用すると、化学療法のみのグループに比べ生存期間が3カ月長くなることを明らかにした。また、Journal of Clinical Oncology誌に報告された研究結果は、末期の患者を介護する人々のストレスは緩和ケアを受けている患者の介護者のほうが少ないことを示している。

 にもかかわらず、医師と患者の間で、緩和ケアの開始やホスピスへの入院に関する話し合いが全く行われないことが多く、行われたとしても、余命が数週間または数日になってからである場合が少なくない。これは患者を傷つけるだけでなく介護者をも傷つける行為といえる。

 ASCOの新たなポリシー・ステートメントは、進行がん患者のケアに必須の要素を示し、患者と医師の対話を妨げているものが何かを明らかにしたうえで、診断から死までの間、医師達が、個々の患者のニーズに答え、患者がめざす理想を実現するケアを実践できるようにする臨床的な方法を列挙している。概要は下記のとおり。

* 診断直後から患者と医師が予後について話し合うべきだ。生活の質は治療過程のすべてにおいて最優先にすべきもののひとつで、医師は患者に予後を知らせ、利用可能なすべての治療のリスクと利益について説明して、両者ともに生活の質に関する意識を高める必要がある。積極的な治療が生存期間を延長できないと考えられる場合には、医師は、並行して行うべき治療または代替となる治療を提案し、患者の選択を支援する。

* 医師養成段階で、また医師の生涯教育において、進行がん患者のケア計画を作製することの重要性を強調し、話題にするのが難しい予後や治療選択について患者と話し合うためのコミュニケーション能力を高める教育を行う。

* 治療計画作成のための話し合いも公的または私的な保険でカバーされねばならない。

* 臨床試験に進行した患者が参加する機会を増やすべきだ。患者は治療によって利益を得られる可能性があるし、収集される情報は進行がん患者のケアの向上に役立つだろう。

* 患者に対する教育リソースを増やす必要がある。これに関連してASCOは、余命や治療選択などに関する相談を医師に対して患者がうまく切り出すために役立つ無料のブックレットを作製した。

 さらにASCOは、今年の後半には、がん専門医が患者とともに治療計画の作製に取りかかることを容易にし、より統合された緩和治療の日常的な実施を助ける初めての臨床ガイダンスを公表する計画だ。