「浸潤が粘膜下層にとどまりリンパ節転移がない早期食道癌では、まず内視鏡的治療を行い、その後、手術や化学放射線療法を追加していく治療ストラテジーが妥当と考えられる」――。米国サンフランシスコで1月20日から22日に開催されている2011 Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI)で、虎の門病院消化器内科の飯塚敏郎氏はこう発表した。

 食道癌に対する内視鏡的治療は以前、直径約2cm以内の癌をスネアをかけて切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)しかなく、適応が限定されていた。その後、より広範囲を切除可能な内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が登場、手術に伴う合併症を防ぐ意味からも、リンパ節転移がない場合には局所的なコントロールに優れた内視鏡的治療が望ましいのではないかとされてきた。

 飯塚氏らは、内視鏡的治療によって癌の治癒切除が可能と判断できれば内視鏡的治療を最初に行い、その後、より下層への浸潤が明らかになれば、浸潤の程度に合わせてフォローアップまたは手術・化学放射線療法の追加を考慮する治療ストラテジーを立て、レトロスペクティブな解析を行った。

 対象は、1998年1月から2010年3月までに内視鏡的治療を行った235人。EMRが140人、ESDが95人だった。治癒切除が行えた割合は、EMRが72.1%、ESDが92.6%だった。合併症は、狭窄が11.4%と最も多く、穿孔1.4%、肺炎1.4%など、全体で15%だった。

 さらに、追加治療を行った83人を解析した。うちわけは、手術27人、化学放射線療法56人。手術に伴う合併症は、狭窄が14.8%、肺炎が11%、反回神経麻痺が7.4%など、全体で41%だった。化学放射線療法によるグレード3以上の合併症は、白血球減少が8人、好中球減少が1人、吐き気・嘔吐が2人などで、治療関連死やグレード4の重篤な有害事象はみられなかった。

 追加治療別に5年生存率をみたところ、手術100%、化学放射線療法75.8%、フォローアップ79.2%だった。5年無増悪生存率は、手術100%、化学放射線療法88.1%、フォローアップ91.4%だった。

 飯塚氏は、「特に重篤な合併症は生じず、5年間という長期の追跡結果も満足のいくものだった。今回の研究はレトロスペクティブかつ1施設という限界があるが、現在、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)でのプロスペクティブな多施設研究が進んでいる。数年以内に結果を示せるものと思う」と述べ、今後への期待で締めくくった。