仏Sanofi-aventis社とその全額出資子会社であるBiPar Sciences社は、2011年1月5日、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の患者に、ゲムシタビン/カルボプラチンとともにイニパリブinipaib、開発名はBSI-201)を投与した無作為化フェーズ2試験の最終結果が同日、米Baylor Charles A. Sammons Cancer CenterのJoyce O’Shaughnessy氏らによりNEJM誌電子版に報告されたと発表した。

 この多施設フェーズ2の結果の概要は、2010年10月に第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で報告されている。あらかじめ設定されたエンドポイントではなかったが、全生存期間はイニパリブ群で有意に長いことが明らかになったという。

 イニパリブは、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)を阻害する癌治療薬だ。DNA損傷の修復に役割を果たすPARPを阻害すれば、腫瘍に対する化学療法の有効性が高められるはずだ。

 乳癌患者の15〜20%は、腫瘍にエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の過剰発現が見られないトリプルネガティブで、それら受容体に標的を定めた治療が有効ではないため、現在でも化学療法剤のみが適用されており、転帰は好ましくない。

 フェーズ2は、1213人のmTNBC患者を登録。ゲムシタビン/カルボプラチンの2剤併用、またはそれらにイニパリブを加えた3剤併用のいずれかに割り付け、進行が見られるまで、または有害事象によって治療中止を余儀なくされるまで、割り付け薬を投与した。なお、ゲムシタビン/カルボプラチンの2剤の投与を受けていて進行を経験した患者については、イニパリブを追加することを認めた。

 主要エンドポイントは、安全性と忍容性、臨床利益率(完全奏効+部分奏効+6カ月以上の病態安定)に置かれており、分析はintention-to-treatで行われた。

 分析の結果、臨床利益率はイニパリブ群が56%、ゲムシタビン/カルボプラチン群が34%で、有意な差が見られた(P=0.01)。無増悪生存期間は、イニパリブ群5.9カ月、ゲムシタビン/カルボプラチン群3.6カ月で、ハザード比は0.59(95%信頼区間 0.36-0.90、P=0.01)。全奏効率(完全奏効+部分奏効)は52%と32%(P=0.02)だった。

 2次エンドポイントにも設定されていなかったが、全生存期間を比較したところ、中央値はイニパリブ群が12.3カ月、ゲムシタビン/カルボプラチン群7.7カ月で、死亡のハザード比は0.57(0.36-0.90、P=0.01)となり、イニパリブを追加することにより死亡リスクが43%低下することが明らかになった。

 あらゆる有害事象の中でイニパリブ群に最も多く見られたのは、好中球減少症、貧血、血小板減少症、白血病、疲労/無気力などだった。

 この適応については、既にフェーズ3試験が進行中で、2011年中に結果が明らかになる見込みだ。