血液がんに対して行われる骨髄移植幹細胞移植の過去10年間の進歩により、治療関連の合併症の発生や死亡率が有意に減少していることが単一施設の解析から明らかになった。米Fred Hutchinson Cancer Research Centerで移植を受けた患者の転帰を検討した結果によるもので、NEJM電子版11月25日版に掲載された。

 同センターの研究チームが比較したのは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群で、1993〜1997年に初回同種造血細胞移植を受けた患者1418人と、2003〜2007年に同じ移植を受けた患者1148人。再発前の死亡率、全死亡率、移植の主要な合併症の頻度と重症度などを解析し、移植時の原疾患の重症度の調整にはPretransplant Assessment of Mortality(PAM)スコアを使用した。

 その結果、再発前の死亡率は、移植後200日以内では60%、200日以降も含む期間では52%減少した。再発や進行は21%減少し、移植後の全死亡率は41%減少した。1年生存率の推定値は、移植を1990年代半ばに受けた患者では55%、2000年代半ばに受けた患者では70%だった。さらに、重度の移植片対宿主病(GVHD)、ウイルス・細菌・真菌による感染症、肺・腎・肝への損傷のリスクも有意に低下した。

 論文の筆頭筆者で生物統計家のTed A. Gooley氏は、移植を2000年代半ばに受けた患者は、1990年代半ばに移植を受けた患者よりも平均して高齢で重症度が高かったことから、死亡や移植の合併症における「リスク」や「ハザード」に変化が生じていると指摘した。

 今回の論文のコレスポンディングオーサーで、消化器病医のGeorge B. McDonald氏によると、転帰の改善という結果が得られたことについて、同研究チームは、今回の研究がレトロスペクティブに行われ、移植技術や治療法を患者群で無作為に比較したものではないためとみている。しかし、同センターをはじめ、世界の主な移植施設で行われている研究で明らかになったリスクの低下には、重要な役割を果たす複数の臨床上の変化があると考えられるという。変化したのは以下の点だ。

・強力な化学療法薬の過少投与や過剰投与を回避するため、薬理学的なモニタリングと用量の調整を慎重に施行
・高齢者や健康状態が不良な患者には骨髄非破壊的前処置を選択
・急性GVHDの治療において、免疫抑制剤の高用量での使用が減少
・肝合併症予防にウルソデオキシコール酸を使用
・ウイルスおよび真菌による感染症の予防治療と早期検出のための新しい方法を確立
・カンジダ属の微生物と糸状菌による重篤な感染症の治療に有効で毒性の低い抗真菌薬を使用
・骨髄に代わるドナー細胞源として、生着が早く、免疫の回復が得られる末梢血の造血細胞を使用
・非血縁ドナーの骨髄や幹細胞の適合について正確性が向上

 McDonald氏は、「転帰の改善は、医学において最も複雑な手技の一つである移植に対するチームアプローチの結果である。今回のデータは、私達の努力を結集すれば患者が長期生存を得られる機会が増すことを示すもの」と評した。