米セントルイスのワシントン大学医学部を中心とする研究チームは、急性骨髄性白血病AML)患者の予後に影響する特殊な遺伝子変異を発見した。この遺伝子はDNAメチルトランスフェラーゼ3ADNMT3A)で、AML患者のDNMT3Aに変異が起こった場合、予後不良となる可能性が高いことが分かった。詳細は、NEJM電子版2010年11月10日に掲載された。

 同チームは、1人のAML患者から遺伝子変異を発見、その後280人のAML患者の検体を用いて、ターゲットDNA塩基配列決定法(targeted DNA sequencing)を用いて、AMLに関連する1つの遺伝子中に変異が認められることを確認した。

 AML患者における遺伝子変異は既に報告されているが、今回の研究では、DNMT3Aに変異が認められる患者の多くで治療が失敗してしまう可能性が高いことが示された。この知見は治療を受ける患者で有用であるとともに、新薬開発に向けて分子標的をもたらす可能性もある。

 DNMT3A遺伝子に変異が認められたのは、全対象281人中62人(22.1%)、intermediate riskに分類された患者166人中56人(33.7%)だった。AML患者の半数以上はintermediate riskに分類され、通常は標準化学療法で治療される。しかし、DNMT3A遺伝子に変異がある患者では、化学療法は最適なファーストライン治療ではない可能性がある。今回発表された論文の筆頭筆者で血液学者のTimothy J. Ley氏は、「標準治療で奏効する患者を予測する信頼性の高い方法はない。しかし、私達の検討では、DNMT3A遺伝子の変異は、intermediate riskのAML患者の不良な転帰を予測する上で、これまでに発見された他の何ものにも勝る」と話した。

 今回の研究では、全生存期間の中央値はDNMT3A遺伝子に変異がある患者で12.3カ月、変異がない患者で41.1カ月となり、前者で有意に短かった(p<0.001)。この知見により、DNMT3A遺伝子に変異がある患者には、骨髄移植や強力な化学療法を直ちに行うことが考えられるようになるかもしれない。研究では、DNMT3A遺伝子に変異がある患者に骨髄移植を行った場合、化学療法のみを行った場合と比べて生存期間が延長した。ただし、ワシントン大学の研究チームは、対象数が少ないことから、追跡を行ってこれらの知見を確認する必要があるとして、慎重な姿勢を示している。

 The Cancer Genome Human Atlas(TCGA)プログラムでは、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の米国国立癌研究所(NCI)と米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の共同研究費により、同一患者の正常細胞と癌細胞のゲノムを比較する包括的な取り組みが進められている。今回報告されたAMLの研究はTCGAプログラムには含まれていないが、ワシントン大学の研究チームは同プログラムの包括的なゲノム解析に対し、約200のAMLの検体を提供している。