米臨床腫瘍学会(ASCO)は11月8日、この1年間に達成された癌治療分野における進歩について総括した報告書「Clinical Cancer Advances 2010」を発表した。

 著名な癌研究者14人が、2009年10月から2010年9月までに論文発表または学会発表された研究結果の中から、癌に関する新たな知見を提供した、または患者のケアに重大な影響を及ぼした研究を選出。報告されたのは、大きな進歩が12件、注目に値する進歩が41件だ。それらの中で、ASCOが特に高い評価を与えたのは以下の成果だ。
 
* 放射線治療による癌の再発リスク低減に関する研究によって、早期乳癌と診断された女性に対する3週間の少分割照射は、通常の5週間の放射線治療と同様に再発を予防することが示された。
 
* QOL向上をもたらすレジメンに関する研究。進行した肺癌の患者に、診断直後から標準的な化学療法と緩和ケアを併用すると、化学療法のみの場合に比べ生存期間が有意に延長し、QOLも向上することが示された。
 
* 薬物療法の進歩。進行膵臓癌に第1選択としてFOLFIRINOX(5-フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチンの組み合わせ)を用いると、奏効率、無増悪生存率、全生存率が向上することが明らかになった。
 
* 注目されていなかった重要な有害事象を発見。化学療法を受ける癌患者の約80%は睡眠障害を経験することが明らかに。睡眠障害に対する介入法の確立が急がれることを示した。
 
* 治療が難しい癌の患者の無増悪生期間の延長に成功。化学療法とベバシズマブ併用後、ベバシズマブの投与を長期間継続する方法が卵巣癌患者の無増悪生存期間を延ばす最も良い方法であることが示された。
 
 報告書は 以下の進歩についても論じている。

*モノクローナル抗体製剤イピリムマブが進行メラノーマ患者の生存率を向上させた。治療が非常に難しい進行メラノーマの領域では大きな進歩。
 
*分子標的治療薬クリゾチニブは、ALK遺伝子に特定の変異を有する癌患者の多くに腫瘍の縮小をもたらすことが明らかになった。
 
*初期段階の臨床試験で、BRAF阻害薬PLX4032がBRAF遺伝子に特定の変異を有する進行メラノーマ患者の多くに腫瘍の縮小をもたらすことが示された。
 
*化学療法の併用は、高齢の進行肺癌患者の生存率を向上させ、忍容性も高いことが示された。
 
*米国では過去数年間継続して癌の罹患率と死亡率が低下していると報告された。
 
*米食品医薬品局(FDA)が進行前立腺癌を適応としてカバジタキセルとシプロイセル-Tを承認した。

 一方で研究者たちは、米国における現在の臨床試験支援体制に対する懸念も示している。臨床試験システムの活性化なくして癌研究の進歩を加速することはできないとし、米国立癌研究所(NCI)臨床試験共同グループが取り組むプログラムに対する資金提供を今後5年間倍増するよう求めている。実際のところ、過去10年間、プログラムへの資金提供が減少しており、重要な試験の迅速な実施や実施自体が制限される状況だったという。
 
 また、研究者たちには、米国立科学アカデミー医学研究所(IoM)が先頃発表した「21世紀の癌臨床試験システム:NCI臨床試験共同グループ・プログラムの再活性化」と題されたレポートに示された勧告の実施に向けた協力を求めている。