肝細胞癌HCC)患者への肝移植は、腫瘍径や数にかかわらず、全例に凝固療法を適用し、さらに待機時間を設けることで、5年無再発率を向上させる可能性を、米University of California San Francisco(UCSF)の研究チームが示した。詳細はLiver Transplantation誌8月号に掲載された。

 肝切除の対象とならないHCC患者にとって肝移植は重要な治療選択肢だ。肝癌に対する肝移植の適応基準であるミラノ基準では、「遠隔転移や血管浸潤がなく、HCCの単発例で腫瘍径5cm以下、多発例では3個以内で腫瘍径3cm以下」とされている。肝移植後の転帰が良好と考えられるHCC患者が対象になるため、その転帰はHCC以外の移植患者とほぼ同等であることが示されている。

 米国癌協会によると、米国では2009年に約2万2620人が原発性肝癌と診断され、成人の原発性肝癌の約90%をHCCが占めており、1万8160人がHCCで年内に死亡すると推定されている。HCC患者は今後増加すると予測されている上、肝移植の基準を拡大して移植の対象となる患者を増やすべきかどうかを研究している研究者もおり、HCC患者の肝移植の基準をどうすべきか議論になっている。

 今回、同研究チームのリーダーを務めるJohn Roberts氏は、「放射線診断で検出可能な腫瘍において、再発の“リスクがない”ことを示す腫瘍の大きさは明らかにされておらず、またミラノ基準に適合する患者であっても再発のリスクは同じではない」と指摘し、ミラノ基準など既存の基準だけでは不適当であると主張している。つまり、腫瘍径や腫瘍の数はサロゲート(代理)マーカーに過ぎず、時間の経過とともに腫瘍がどのような挙動を示すかが重要であり、それを示すマーカーを用いることで最適な治療戦略を立てることができるというわけだ。

 UCSFの研究チームは、腫瘍径が基準以上の場合、ラジオ波熱凝固療法、化学塞栓療法、またはその両方を適用して腫瘍を縮小させた後、待機時間を設けて遠隔転移や肝内転移の有無など腫瘍の生物学的な特徴を確認し、肝移植の対象とした。その結果、HCCの進行により肝移植に不適格とされる患者が約30%見られるものの、ミラノ規準を超える症例で腫瘍を縮小させる治療を行わずに移植を行った患者と比較して、転帰は良好であったという。腫瘍を縮小させる最初の治療から移植までの期間の中央値は8.2カ月(3-25カ月)だった。

 Roberts氏は「移植の最終的な転帰は、原発腫瘍の大きさや数よりも移植の待機時間に依存することが示唆された。ミラノ基準内の患者にこの待機時間を設けることにより、再発率を10%減少させられる可能性もある」と結論している。

 なお同論文のオンライン版は、2010年4月24日に公開されている。