非侵襲的に肝臓の硬化度を測定することで、慢性肝疾患の発癌リスクを評価できる可能性が示された。山梨大病院消化器内科の辰巳明久氏らの研究結果で、7月7日から大阪市で開催されている第46回日本肝癌研究会で発表した。

 ウイルス性肝疾患をはじめとした慢性肝疾患において、肝線維化が進行すると発癌リスクが高くなることが明らかとなっている。現在は肝線維化の評価は肝生検で行われており、非侵襲的な方法が求められている。

 そこで辰巳氏らは、transient elastographyを用いて肝発癌例と非肝発癌例の肝硬度を測定し、肝発癌リスクの評価に有用かどうか検討した。transient elastographyは、専用プローブから機械的に振動波を送る装置(「Fibro scan502」)で行う。振動波を皮下から肝内に伝播させて、伝播速度をエコーで測定する。この伝播速度を硬度(kPa)に変換して、肝硬度を評価する仕組みだ。右肋間に専用プローブを当て、肝右葉をAモードエコーで確認して測定した。測定値には、肝硬度を10回以上測定して中央値を採用した。

 対象は2010年1〜6月に山梨大病院の肝臓専門外来を受診、または入院した慢性肝疾患患者265例だ。

 このうち肝発癌例は62例で、平均年齢70.3歳、男性35例。C型肝炎は42例、B型肝炎は10例、非B非C肝炎例は10例だった。線維化マーカーである血小板数は10.5(104/μL)、腫瘍マーカーのAFPは162(ng/mL)、肝硬度は22.9(kPa)、Child-PughはAが26例、Bが24例、Cが1例だった。一方、肝非発癌例は203例で、年齢59.1歳、男性102例、C型肝炎は156例、B型肝炎は15例、非B非C肝炎例は32例で、血小板は15.2(104/μL)、AFPは6.1(ng/mL)、肝硬度は10.1(kPa)だった。年齢、血小板、AFP、肝硬度について2群間で有意に異なっていた。

 全症例の肝硬度を測定し、肝硬度と肝発癌に関するROC解析を行った結果、AUCは0.861、カットオフ値は12.2kPa(感度83.6%、特異度82.7%、オッズ比24.353)だった。このカットオフ値を用いて肝発癌例を解析したところ、12.2kPa以上は83.6%、肝非発癌例では12.2kPa未満が82.7%となった。AFPでのROC解析ではAUCが0.748(感度64.5%、特異度71.1%、オッズ比4.691)、血小板でのROC解析ではAUCが0.733(感度58.1%、特異度84.4%、オッズ比5.94)で、肝硬度による発癌リスク評価は有効であると考えられた。

 C型肝炎198例だけを対象として肝硬度と肝発癌に関してROC解析を行った結果、AUCは0.894、カットオフ値12.8kPa(感度85.0%、特異度91.9%、オッズ比64.058)だった。このカットオフ値を用いて肝発癌例を解析した結果、12.8kPa以上は91.9%、肝非発癌例では12.8kPa未満が85.0%となった。AFPでのROC解析ではAUCは0.81(感度78.6%、特異度71.1%、オッズ比9.03)、血小板でのROC解析ではAUCが0.813(感度85.3%、特異度73.8%、オッズ比16.397)で、C型肝炎患者において、肝硬度測定が肝発癌リスク評価に有効であると考えられた。

 B型肝炎例だけを対象として解析した結果、AUCは0.796、カットオフ値8.8kPa(感度70.0%、特異度85.7%、オッズ比14.00)。このカットオフ値を使って肝発癌例を解析した結果、8.8kPa以上は70.0%、肝非発癌例では8.8kPa未満が85.7%だった。この結果から、B型肝炎例では肝硬度が低くても発癌例が見られ、有用性は低いと考えられた。

 非B非C型肝炎例だけを対象としたROC解析の結果、AUCは0.771、カットオフ値は18.4kPa(感度87.5%、特異度60.0%、オッズ比10.5)で、カットオフ値を使って肝発癌例を解析した結果、18.4kPa以上は8例中7例で87.5%だった。肝非発癌例では、18.4kPa未満は15例中9例で60.0%だった。この結果から、非B非C型肝炎の発癌例では肝硬度が高く、肝硬度が低い症例での発癌例はほとんど見られなかった。

 今回の解析は慢性肝炎で通院あるいは入院している症例を対象としているという制限はあるが、同グループはtransient elastographyによる肝硬度の測定は、特にC型肝炎例の肝発癌リスク評価に有効だと結論した。B型肝炎例、非B非C型肝炎例でもそれぞれの疾患に合わせたカットオフ値を設定することで有用と考えられるとした。今後は多くの、より幅広い患者を対象とした解析を行い、知見を積み重ねていくことで患者負担が少ないフォローアップ方法となる可能性がある。