直腸癌が固有筋層を超えて壁外浸潤を来した場合、その距離と予後との間にどのような関連があるかはまだ十分に明らかになっていない。浸潤距離を1mmごとに区切り、さまざまな統計学的手法を用いて検討した結果、予後予測に最も適したカットオフ値は4mmに設定できることが報告された。4月8日から10日まで名古屋市で開催された第110回日本外科学会定期学術集会で、久留米大学外科の赤木由人氏が、大腸癌研究会のプロジェクト研究の成果として発表した。

 対象症例は、1995〜1999年に手術を施行し根治度Aだった直腸癌1060例。切除組織から壁外浸潤距離を実測、ロジスティック回帰分析などの統計学的手法により、予後に影響を与える浸潤距離を推定した。また、浸潤距離と他の再発危険因子との重要度比較も行った。

 壁外浸潤距離の実測平均値は4.9mmで、中央値は3.8mmだった。浸潤距離を1mmごとに区切ってそれぞれの再発率を求めたところ、L/U比(95%信頼区間の下限値と上限値の比)が最も高値だったのは、4mm以下と4mm超に分けた場合の0.597だった。また、ROC曲線を用いて再発の有無からみた壁外浸潤距離のカットオフ値を求めたところ、4.2mmとなった。

 これらの結果を基に、壁外浸潤距離4mm超について、側方転移あり、リンパ節転移ありなどといった、再発に影響し得る他の臨床病理学的因子との多変量解析を行った。その結果、壁外浸潤距離4mm超は、再発との有意な関連がみられ(p<0.0001)、L/U比0.631と最も高値だった。

 さらに、浸潤距離4mm超の有用性を、従来広く用いられてきた深達度分類と比較した。ステージII直腸癌の無再発生存率は、浸潤距離4mm以内で87%、4mm超で68%(p<0.0001)だった。一方、深達度a1では85%、a2では73%(p=0.0004)だった。ステージIII直腸癌の無再発生存率は、浸潤距離4mm以内で62%、4mm超で47%(p=0.0002)だった。これに対し、深達度a1では59%、a2では51%(p=0.0436)だった。

 赤木氏は、「固有筋層下端から4mmを超えた浸潤は、深達度分類と比較しても、予後予測に関して優れた結果が得られた。今後、このカットオフ値は術後補助化学療法の実施基準などにも応用可能と考えられる」と結んだ。