アデノウイルスを利用した抗癌剤であるテロメライシンには、放射線治療との併用で放射線治療の効果を高める可能性があることが報告された。放射線と併用する方法は、米で食道癌に対する術前療法(フェーズ2)が準備中で、日本では進行頭頸部・食道癌に対するフェーズ1/2臨床研究が岡山大学で審議されている。これは4月8日から10日まで名古屋市で開催された第110回日本外科学会定期学術集会のワークショップ「癌治療向上のためのtranslational research」で、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授の藤原俊義氏が明らかにした。

 テロメライシンは、ヒトアデノウイルス5型のE1領域にテロメラーゼプロモーターを組み込んだ腫瘍殺傷ウイルス製剤。テロメラーゼ活性が高まっている癌細胞の中で特異的に増殖して癌細胞を殺すが、正常細胞中での増殖能力は弱く、細胞毒性を示さないのが大きな特徴。

 放射線によるDNA傷害修復機構は、放射線によって二重鎖DNAが切断されるとMRN複合体が形成され、ATMがリン酸化され、DNAが修復される。テロメライシンを併用すると、テロメライシン由来のE1Bたんぱく質がMRN複合体と結合し、MRN複合体の分解を促進、ATMのリン酸化が阻害され、DNAの修復が阻害されるという。

 藤原氏らは、マウスのヒト食道癌モデルで実際にテロメライシンと放射線による抗腫瘍効果が相乗的に高まることを確認している。