カナダOttawa病院地域癌センターのSean Hopkins氏は3月24日、第7回欧州乳癌会議で、乳癌の患者に対するホルモン療法の利益を十分に引き出すためには、患者にかかわるあらゆる領域の医師が情報を共有しなければならないと述べた。

 乳癌領域の臨床薬学の専門家であるHopkins氏らは、乳癌治療薬タモキシフェンは肝臓の薬物代謝酵素シトクロムP450によって代謝されて活性を得ること、シトクロムP450の一種であるCYP2D6の多型がタモキシフェンの有効性に影響を与えること、CYP2D6の働きを妨げる作用を持つ特定の抗うつ薬(パロキセチンなど)を使用している乳癌患者においてはタモキシフェンの有効性が下がることから、患者に関する詳細な情報を得てからタモキシフェンを用いるかどうかを判断する必要があると考えた。

 Hopkins氏らがOttawa病院のデータベースに登録された乳癌患者531人に関する情報を分析したところ、抗うつ薬や禁煙補助剤(ブプロピオンなど)といったCYP2D6阻害作用を持つ薬剤をホルモン療法中に用いていた患者が少なからず存在したという。乳癌に対するホルモン治療を受けていた463人のうち、強力なCYP2D6阻害薬とともにタモキシフェンを使用していた患者が7人、CYP2D6阻害作用が中等度の薬剤とタモキシフェンを併用していた患者は10人いた。

 多くの場合患者は、タモキシフェンの効果を弱める薬剤をタモキシフェン治療開始前から使用していた。従って、抗うつ薬を別の種類のものに変更する、または、タモキシフェン以外の癌治療薬(アロマターゼ阻害薬など)を選択する、といった対応が可能だったと考えられた。しかし、個々の患者に関わる医療従事者間のコミュニケーションと情報の共有がなければ、適切な治療の選択は不可能だ。

 研究者たちは、同センターで治療を受けている乳癌患者(年間6000人超)を追跡し、適用された治療と生存期間などの関係を調べるという。患者の一部には治療開始前にCYP2D6遺伝子型検査も行い、特定の多型が見つかった患者にはタモキシフェンではなくアロマターゼ阻害薬を用いる試みなども進めて、乳癌薬物療法の利益を最大化するための治療戦略を確立する計画だ。