進行大腸癌患者に対するペプチドワクチン療法のフェーズ1試験で、全生存率は治療開始から約半年間は低下するものの、その後改善傾向がみられ、特に3種以上のペプチドに特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を示した場合に予後が良好であることが示された。2月20日に都内で開催された第7回日本免疫治療学研究会学術集会で、山口大学大学院消化器・腫瘍外科学の硲彰一氏が発表した。


 硲氏らは、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの中村祐輔氏らと共同で、特異的能動免疫療法として大腸癌を中心とする癌ペプチドワクチン療法の研究を行ってきた。この研究では、日本人の約60%が有する白血球型抗原HLA-A*2402に対するペプチドから、3種の大腸癌特異的エピトープペプチド(KOC1、RNF43、TOMM34)と、2種の腫瘍新生血管特異的エピトープペプチド(VEGFR1、VEGFR2)を使用している。

 フェーズ1試験ではHLA-A*2402の患者12人に週1回ペプチドワクチン(0.5mg、1mg、3mg)を皮下投与し、安全性が確認され、3mgが至適投与量と判断された。先行治療にはイリノテカン、オキサリプラチンの投与や放射線療法が含まれたが、完全奏効(CR)は1人、安定状態(SD)は4人に認められた。

 この研究では当初、5種のペプチドを5本のシリンジに分けて投与していたが、ペプチドの親和性はほぼ変わらないことから、患者と医師・薬剤師の負担軽減のため、3mgを1本に混合することとした。6人を対象とした追加のフェーズ1試験では、CTL反応がみられた5人では3mgを個別に投与した場合と同様に、混合して投与した場合も1人あたり3個のペプチドに反応が認められた。SDは6人中3人だった。

 標準治療が無効だった進行大腸癌患者の全生存率(OS)について、2007年にEric Van Cutsem氏らが、パニツムマブ投与群(232人)と支持療法群(BSC、231人)の比較試験の結果を報告している。この試験ではKRAS遺伝子解析がまだ行われておらず、無増悪生存期間(PFS)はパニツムマブ投与群で有意に良好だったが、クロスオーバー試験であったためOSに有意差はみられていない。

 同大でペプチドワクチン療法を行いOSを評価した16人では、最初の半年間はパニツムマブ投与群、BSC群と同様にOSは低下したが、その後は改善傾向がみられ、生存期間中央値(MST)は12.3カ月だった。

 2種以上のペプチドにCTL反応を示した患者は、CTL反応がないかCTL反応が1種のみの患者に比べて予後が良好で(p=0.084)、さらに3種以上のペプチドにCTL反応を示した患者は、CTL反応がないかCTL反応が2種以下の患者に比べて有意に予後が良好だった(p=0.027)。

 硲氏らは、FOLFIRI、FOLFOXに併用するベバシズマブまたはセツキシマブに代わる治療として、癌ペプチドワクチン療法を進行・再発性大腸癌のファーストライン治療として検討する多施設共同のフェーズ2試験を実施中である。

 フェーズ2試験では、対象全員にmFOLFOX6に併用してペプチドワクチン療法を行い、HLA-A*2402の患者とHLA-A*2402以外の患者を比較検討する予定。症例登録数100人を目標に、現在、症例の集積が進められている。