米Johns Hopkins大学のWilliam Matsui氏らは、早期の膵臓腺癌患者から摘出された腫瘍におけるアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の発現と患者の生存期間の関係を調べた。得られた結果は、ALDH陰性だった患者に比べ、陽性の患者の生存期間は有意に短いことを示した。詳細は、米国立癌研究所(NCI)ジャーナル電子版に2010年2月17日に報告された。

 正常なヒト幹細胞と同様に、膵臓腺癌その他に存在するヒト癌幹細胞にもALDHの活性上昇が見られるとの報告があった。著者らは、膵臓腺癌中のALDH陽性細胞の存在が患者の臨床転帰に与える影響を調べることにした。

 膵臓腺癌の患者から摘出された269標本を対象に、免疫組織化学法を用いてALDHの発現を分析、個々の患者の生存との関連を調べた

 269標本のうち90標本にALDH陽性の癌細胞が存在していた。それらの患者の生存期間はALDH陰性の患者より有意に短かった(14カ月と18カ月,ハザード比は1.28、95%信頼区間1.02-1.68)。

 in vitro(コロニー形成アッセイ)とin vivo(免疫不全マウスに移植)で細胞の増殖能力を比較したところ、ALDH陽性細胞のコロニー形成能力は陰性細胞または膵臓腺癌細胞全体の5-11倍だった。

 つぎに、RT-PCTとin vitro細胞浸潤アッセイを行い、ALDH陽性細胞が、他の種類の細胞に分化する能力を持つ間葉系細胞としての性質を示すかどうか、また、浸潤性を有するかどうか調べた。

 ALDH陽性細胞の遺伝子発現は間葉系細胞の特徴を示し,in vitroにおける遊走と浸潤の能力は膵臓腺癌細胞全体の約3倍と高かった。

 得られた結果は、膵臓腺癌中に存在するALDH陽性細胞は、癌幹細胞の特徴を示すこと、この細胞が転移を促進し、全生存期間の短縮をもたらしている可能性があることを示唆した。