米Duke大学のWilliam Mostertz氏らは、約800人の非小細胞肺癌患者の癌細胞の遺伝子発現プロファイルと5年無再発生存率の関係を分析した。年齢、性別で患者を層別化し、5年無再発生存率が最も高い(低リスク)グループと最も低い(高リスク)グループを比較したところ、癌の発生や生存に関わる特定の経路の活性化の度合いがグループごとに異なることが明らかになった。詳細はJAMA誌2010年2月10日号に報告された。

 これまで、臨床病理学的特性が異なる患者の間で癌細胞の遺伝子発現が比較されたことはほとんなかった。

 Mostertz氏らは、過去に行われた肺癌遺伝子発現プロファイリング研究から、マイクロアレイを用いた発現分析の結果と臨床データがそろっていた4件を選び、主に早期の非小細胞肺癌患者787人の情報を抽出して、後ろ向きに分析した。目的は、5年無再発生存率と相関を示す特定の経路の活性化を見い出すことだった。

 患者を年齢(70歳未満が520人、70歳以上が267人)と性別(男性が414人、女性が373人)に基づいてサブグループに分けた。さらに、5年無再発生存率を指標に、年齢グループ、性別グループのそれぞれから、最低リスク群と最高リスク群の患者を同定した。

 これら患者群において、癌化に関わることが知られている経路(βカテニン、E2F1、Myc、Ras、Src、EGFR、STAT3)と腫瘍のバイオロジー/腫瘍微小環境に関わる経路(染色体不安定性、幹細胞のエピジェネティック修飾の異常、浸潤性、腫瘍壊死因子、創傷治癒)の遺伝子発現シグネチャに活性化や脱制御が起きているかどうかを調べた。活性化や脱制御があれば、その経路のスイッチは常にオンになっていると考えられる。

 これらの経路に関わる遺伝子の発現パターンはグループ間で似通っていたが、以下には有意差が確認された。

 70歳未満で高リスク群の患者では、低リスク群に比べ、Src経路(高リスク群では25%、低リスク群は6%)と腫瘍壊死因子経路(同様に76%と42%)が活性化されている頻度が高かった。

 70歳以上の高リスク群では、低リスク群に比べ、創傷治癒系路(70%と24%)と浸潤に関連する経路(64%と20%)の活性化が高頻度に起きていた。

 女性では、高リスク患者で、浸潤に関連する経路(99%と2%)、STAT3経路(72%と35%)の活性化が多く見られた。男性では、STATS3(87%と18%)、腫瘍壊死因子(90%と46%)、EGFR(13%と2%)、創傷治癒(50%と22%)に関わる経路の活性化が有意に多く認められた。

 多変量解析により、これらの経路の活性化と5年無再発生存率の関係が有意になったのは、女性(ハザード比;2.02、95%信頼区間;1.34-3.03)と70歳未満(同1.83、同1.24-2.71)の患者だった。

 研究結果は、癌化と癌細胞の生存に関わる経路の活性化プロファイルが無再発生存期間と有意に関係していること、患者の年齢、性別により活性化されている経路が異なることを示した。将来的には、特定の経路の活性化を指標とする予後予測や治療選択が可能になるかもしれない。