手術不能進行肝細胞癌患者でTACE肝動脈化学塞栓療法)が有効であった患者にソラフェニブを投与することは、中央評価委員会による評価では増悪までの時間(TTP)を有意に延長することはできなかったことが明らかとなった。日本と韓国で行われた多施設フェーズ3試験の結果明らかにされた。ただし、TTPの推移のデータではソラフェニブ群が常に上に行き改善傾向が認められ、さらに試験実施者による評価ではTTPの改善傾向はより顕著となった。また、日本人ではTTPに差がなかったが、韓国人に限定すると統計学的に有意にソラフェニブ群が優れていた。成果は1月22日から24日まで米オーランドで開催された2010 Gastrointestinal Cancers SymposiumASCO GI)で社会保険下関厚生病院の沖田極氏らが発表した。

 沖田氏は「投与期間の差が日本と韓国の差となった。韓国の方が日本よりも1年後に試験に参加したため、副作用などの情報があり、日本よりも長期間ソラフェニブを投与できた事が大きいと考えられる。TACE後のできるだけ早期に長期間投与することが、ソラフェニブを有効に利用するためには必要だ」と語った。

 日韓の76施設で行われたフェーズ3試験はTACEで効果が見られた手術不能進行肝癌患者を1日2回400mgソラフェニブを投与する群(229人)と1日2回400mgプラセボを投与する群(229人)に分けて行われた。試験の主要評価項目は中央評価委員会によるTTPだった。ソラフェニブ群に含まれた日本人患者は196人、プラセボ群に含まれた日本人は191人だった。TACEで完全奏効(CR)となった患者の割合は、ソラフェニブ群、プラセボ群ともに62%だった。

 試験の結果、中央評価委員会による判定では、ソラフェニブ群のTTP中央値は164日(5.4カ月、95%信頼区間;116-220)で、プラセボ群のTTP中央値は112日(3.7カ月、95%信頼区間;106-122)となり、ハザード比0.87(95%信頼区間;0.70-1.09、p=0.252)で統計学的に有意な差は示されなかった。ただし、ソラフェニブ群のTTP率のグラフはプラセボ群の線よりも常に上にあった。副次評価項目であった全生存期間中央値はソラフェニブ群が903日(29.7カ月、95%信頼区間;872-NE)、プラセボ群が未到達でハザード比は1.06(95%信頼区間;0.69-1.64、p=0.790)で差がなかった。

 しかし、試験実施者による評価では、ソラフェニブ群のTTP中央値は220日(7.2カ月、95%信頼区間;169-278)で、プラセボ群のTTP中央値は161日(5.3カ月、95%信頼区間;115-169)となり、ハザード比0.79(95%信頼区間:0.62-1.00)、p=0.049でより大きな差がある傾向が示された。またTACE後ソラフェニブを投与するまでの期間が9週間を超える群では、ソラフェニブ群とプラセボ群ではTTPで全く差がなかったが、9週間以下の群ではソラフェニブ群(91人)がプラセボ群を上回る傾向が示された。また、日本人ではソラフェニブ群とプラセボ群のTTPを比較するとハザード比0.94(95%信頼区間;0.75-1.19)で差がなかったが、韓国人ではハザード比が0.38(95%信頼区間;0.18-0.81)と統計学的に有意な改善が認められた。ソラフェニブ群では日本人の治療期間中央値が25.2週だったのに対して韓国人は36.3週とより長い傾向が認められた。

 ほとんどの副作用は軽度から中等度で、新規や予想外の副作用は認められなかったが、手足症候群の発現頻度は他の試験で報告されているものより高かった。